『グロースハッカー』 (ライアン・ホリデイ 著/佐藤 由紀子 訳/加藤 恭輔 解説)
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■伝統的なマーケティング戦略を放棄したグロースハッカー
ドロップボックス、ツイッター、フェイスブックなどの新興企業が、コストをかけずに、たった数年で数千万、数億ユーザーをつかみとれたのはなぜか。そこでは、ユーザーを巻き込みながら製品の改良を繰り返し、最適化していくという、従来のマーケティングとはまったく異なる「グロースハック」と呼ばれる新しい手法が用いられている。グロースハッカーの武器となるのは、CMや宣伝や資金ではなく、電子メールやブログなどだ。“ブランディング”といった漠然としたものを追い回す古い世代のマーケターとは違い、グロースハッカーはひたすらユーザーを追跡し、獲得につなげていく。
本書は、マーケターとして多くの実績を持つ著者が世界中のグロースハッカーたちにインタビューして学んだ、ユーザーを一人から1万人に、さらにその100倍に増やすプロセスを紹介するとともに、なぜ彼らの手法が有望なのかを解説している。 -
■潜在ユーザーを把握し、ピンポイント攻撃で引き込む
クラウドストレージサービスのドロップボックスは、今でこそ1億人以上のユーザーを擁するが、立ち上げ当初は一般公開せず、招待リスト登録制度を取っていた。同社はその招待リストへの新規登録を促進するため、サービス内容を紹介するデモ動画を自作した。その際、動画の投稿先となるサイトのユーザー層を把握し、動画には彼らが好みそうなネタをちりばめた。その結果、この動画は潜在ユーザーの間で爆発的な人気を博した。また、友達にドロップボックスを紹介し、その友達が会員登録したら、一人当たり500メガバイトずつ無料のストレージ容量を獲得できる紹介プログラムを構築し、さらに新規ユーザーを増加させた。
グロースハッカーは、一般大衆の注目を集めるための派手な広告展開の代わりに、ふさわしい相手へのピンポイント攻撃でユーザーを引き込む。グロースハックは、ツールキットというよりもマインドセット(考え方)だ。従来の古臭い考えから解放されれば、マーケティングはこれまでより安価で、簡単で、拡張可能なものになる。 -
◎著者プロフィール
作家のタッカー・マックスやアメリカン・アパレルのドヴ・チャーニーCEOといったひと癖あるクライアントを持つメディア戦略家。19歳で大学を中退した後、多数のベストセラー作家、企業、人気ミュージシャンのアドバイザーを務める。現在はアメリカン・アパレルのマーケティングディレクターを務め、その実績は世界に知られている。手掛けたキャンペーンは、グーグルなどでケーススタディとして採用されている。