『上山集楽物語』(英田上山棚田団出版プロジェクトチーム 編著)
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■限界集落を見事に立ち直らせた「英田上山棚田団」の活躍を描く
高齢化と過疎化によって産業が廃れ共同体も崩壊へ向かう、いわゆる「限界集落」は、現在日本中に数多く存在する。そんな「限界集落」の一つであった岡山県美作市上山(うえやま)を見事に立ち直らせた“ヨソモノ”集団がいる。「英田(あいだ)上山棚田団」だ。今や耕作放棄されていた棚田から約4トンの米を生産し、SNS等の手段を用いて全国に流通させるようになり、村の集落営農組織「一般社団法人上山集楽」を設立するまでに至った。本書は、彼らが村を復活させるまでの経緯にまつわる、数々の「物語」を紡いだものである。
英田上山棚田団が活動を開始したのは2007年。定年退職した大阪の元商社マンが上山で生活し始めたのがきっかけだった。草を刈ることからスタートした棚田団の活動は、次第に村人の協力を得るようになる。そして村民と“ヨソモノ”たちが問題を共有することで、農業のみならず、集落の伝統や文化をも再生させていくことになった。 -
■“ヨソモノ”と住民が力を合わせて地域の特性価値を引き出すことが重要
棚田団は、真の地域再生とは、不便な場所を便利に変えることだけではないと考えている。どの地域にも、そこにしかない特性や価値が必ずあるはずだ。そしてそれらを、住民自らが主体となって引き出すことが重要なのだ。上山では村にやってきた“ヨソモノ”“ワカモノ”たちの力を、村人が正面から受け止め、ともに再生に取り組むようになった。それが自分たちや村の自信と誇りを取り戻すことにつながったのだ。
2004年以来途絶えていた上山の夏祭りを復活させた立役者は、「大地」のニックネームで呼ばれる、東京から来た大学生だった。きっかけは、大地と村人が交流する場で、ある村民がもらした「もっぺん踊りてえなあ」という一言。そのため息に「この集落がこれからも続いてほしい」という願いを感じとった大地らは、村人たちとともに準備を進め、見事に祭りを蘇らせた。その成功は「孫みたいなもん」と言わしめるまでに真摯に村と向き合った大地の行動によるものだった。 -
◎編著者プロフィール
棚田の再生を通じて中山間地の可能性を引き出し、新しい地域社会作りに挑戦する英田上山棚田団。その活動を広く世に紹介するために結成されたのが「英田上山棚田団出版プロジェクトチーム」。文脈力のフミメイ(田中文夫)、構築力のきっちい(武吉栄治)、編集力のボブ(原田明)。各々の得意能力をフェイスブックやグーグルの機能を駆使して組み合わせ、練り上げる。協力して創造する《協創》型の執筆・編集態勢で本書を編んだ。