『日本の人事は社風で決まる』 (渡部 昭彦 著)
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■企業の意思決定や人事に強い影響を与える「社風」の正体に迫る
「性格が社風に合っていたから出世した」「社風が合わないから転職しようかな」というように、「社風」は何気ない日常会話の中でよく使われる言葉だ。本書は、この「社風」が企業の意思決定や人事に強い影響力を持っていると指摘。「会社の支配者」とさえいえる「社風」の正体に迫り、各社員がそれに対処する方法を提言している。
社風が形成される主な要因には、「顧客との距離」「資本形態」「歴史」の三つがある。例えば消費者と直接接する機会の多い小売業では“体育会系的”社風が、BtoBのビジネスでは“官僚的”社風が、それぞれできあがりやすい。二つ目の「資本形態」とは、例えばオーナー系の企業ではトップの性格が社風に反映されやすいことを指す。また、経営危機に直面しそれを乗り越えたことなど、会社のさまざまな経験の「歴史」のなかで生み出された知恵や知識が蓄積され、そのエッセンスが社風として受け継がれていく。 -
■「社風」と付き合うコツは「自分の立ち位置」を定めること
トップや主力社員が入れ替わっても「社風」は代々受け継がれる。大多数の社員が、社風の「運び屋」になるからだ。すなわち、いまだ日本の人事では「人物主義」による採用や昇進の判断がなされており、人事担当者や上司が意識的あるいは無意識のうちに「自分と似た人物」を選んでいるのだ。社風に染まった人事や上司が「似た人物」を残していくことで、おのずと社風は後進に伝えられていく。
「社風」と付き合っていくためにもっとも重要なのは「自分の立ち位置を定める」ことである。「仕事と私生活のバランスのとり方」「社内での人間関係の濃淡」という二つの軸をクロスさせた図の中で、自分がどのあたりに位置するかを確認し、それを「社風」と比較してみるとよい。そして、そこで定めた自分の「立ち位置」や性格と、社風の「距離」を調整する。本来はクールな性格だが体育会系の泥臭さを前面に出して仕事をするなど、社風に飲み込まれずに、逆に上手に利用することが社風に対抗する唯一の道といえるのだ。 -
◎著者プロフィール
ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス代表取締役社長。1956年生まれ。東京大学経済学部を卒業後、日本長期信用銀行入行。支店業務、中央官庁出向、国際金融部、本店営業部を経て、1994年から2000年まで人事部に勤務。その後日本興業銀行を経て、セブン‐イレブン・ジャパンで人事セクションの部長、楽天グループでは財務担当の執行役員の他、楽天証券において人事を含む管理部門の担当役員を歴任。