『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(小倉 広 著)
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■「自己啓発の父」と称される心理学の巨人の人生哲学を解説
オーストリア出身のアルフレッド・アドラー(1870-1937)は、フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨人の一人。本書では「自己啓発の父」とも称されるアドラーとその弟子たちによる100の言葉をもとに、その人生哲学を、私たちの身近な事柄にたとえながら解説している。
アドラーはフロイトによる「人は過去に規定される」という「原因論」に異を唱えた。それに対し、人は未来に向けて目的をもち、その目的に沿って自分で行動を決めるという「目的論」と「自己決定性」を主張したのだ。
現代に生きる私たちは、ともすると原因論的な考え方をしてしまうことがある。人生がうまくいかないことの原因を遺伝や環境に求めてしまいがちなのだ。だが、過去は変えられない。同じ材料(遺伝や環境)を使っても、それをどう使うかで建つ家(人生)は違ってくる。材料の使い方を選択する自由は、自分自身が持っている。それがアドラーの重要なメッセージなのだ。 -
■企み抜きの信頼から生まれる「共同体感覚」で人は幸せになれる
アドラー心理学の中核ともいえる考え方に「共同体感覚」がある。アドラーらは、共同体感覚を持つことによって人は悩みから解放され、幸せに近づくことができるとした。
共同体感覚は「他者信頼」「自己信頼」「所属感」の三つから構成される。他者信頼とは「私のことを周囲の人は援助してくれる」、自己信頼は「私は周囲の人に対し貢献できる」、所属感は、他者信頼と自己信頼の結果、共同体に居場所がある、ということ。
他者信頼と自己信頼は互いに因果関係がある。他者が援助してくれると感じられるからこそ、他者に貢献しようと考える。逆に、自信をもって他者に貢献すれば、他者からの信頼感を感じられるようになる。
「信頼」は「信用」とは違う。「信用」は何らかの裏づけがあって成立するが、「信頼」は、たとえ裏切られる可能性があっても信じることを指す。アドラーのいう共同体感覚は、企み抜きの人間的な信頼と感謝をベースにしているのだ。 -
◎著者プロフィール
組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。東洋哲学およびアドラーを中心とした心理学をバックグラウンドに「人生学」の探求および普及活動を行っている。著書に『任せる技術』(日本経済新聞出版社)、『自分でやった方が早い病』(星海社新書)などがある。