『沸騰! 図書館』 (樋渡 啓祐 著)

『沸騰! 図書館』 ‐100万人が訪れた驚きのハコモノ

『沸騰! 図書館』 (樋渡 啓祐 著) 

著 者:樋渡 啓祐
出版社:KADOKAWA(角川oneテーマ21)
発 行:2014/05
定 価:800円(税別)


【目次】
1.閉館図書館と呼ばれて
2.TSUTAYAを口説く
3.大荒れ議会と大荒れネット
4.新図書館攻防戦、土壇場まで
5.図書館に街が誕生した!

  • ■多くの人が使える図書館にするため、代官山蔦屋書店を武雄へ!

     ものすごく静かで子どもが少しでも話そうものなら怒られる。閉館は夕方、それ以降は利用できない。こうして多くの人が使えないのが日本の公立図書館の一般的な姿だ。佐賀県にある武雄市図書館も、かつてはまさにそうだった。しかし、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定管理者にしてリニューアルした結果、来館者数が100万人を突破し、日本一注目される図書館に。本書は、武雄市長である著者自らが、武雄市図書館のリニューアルオープンまでの1年間を追いながら、図書館の新しいカタチを紹介している。
     2011年暮れ、CCCの増田宗昭社長が出演するビジネス番組を見ていた著者の心をつかんだのは、番組で流れていた代官山蔦屋書店だった。テレビに映る書店は落ち着いた照明を取り入れて大人が長居できる雰囲気を醸し出し、本を読みながらスターバックスのコーヒーを飲めたりと、何とも魅力的だった。そこで、なんとしてもあの代官山蔦屋書店を武雄に持ってきたいと決意したのである。

  • ■街づくりのエンジンとなった図書館

     受け入られなかったらどうしようという悪夢はオープン初日で消えた。来館者数5517人は史上初の快挙だった。予想を上回ったのが子連れ客である。話を聞くと、「館内に音楽が流れていて、子どもが泣いたりしてもうるさく思われないので安心して利用できる」との答えだった。市外・県外の観光客やビジネス客の利用が大きく増えたことも想定外だった。地元の図書館や書店は利用しづらいということで、ゆっくり滞在できる武雄市図書館へと来てくれたのだ。
     観光客・ビジネス客が増えたことで武雄の経済も好影響を受けている。観光客を集める施設には数十億円、もしくはそれ以上の巨額を投入するのが常である。だが、武雄市図書館の改装費用は4.5億円でしかない。これだけコストを抑えて100万人も集めるハコモノは武雄市図書館くらいだろう。周辺には、マンションの着工計画も進んでいる。今や武雄市にとって、図書館は街づくりのエンジンとなっているのである。

  • ◎著者プロフィール

    武雄市長。1969年佐賀県武雄市生まれ。東京大学経済学部卒業後、総務庁(現総務省)に入庁。大阪府高槻市市長公室長への出向などを経て、同省を退職。2006年、武雄市長選に出馬し当選。当時の全国最年少市長として注目を浴びる。多くのユニークなアイデアで市の活性化を実現。中でも13年4月にリニューアルオープンした武雄市図書館が画期的な公共施設として話題に。著書に『首長パンチ 最年少市長GABBA奮戦記』(講談社)など。