『人生と経営はタクシー運転手が教えてくれる』(小宮 一慶 著)

『人生と経営はタクシー運転手が教えてくれる』

『人生と経営はタクシー運転手が教えてくれる』(小宮 一慶 著) 

著 者:小宮 一慶
出版社:サンマーク出版
発 行:2014/04
定 価:1,400円(税別)


【目次】
1.人に損をさせてはいけません。小さな得を追う人ほど、大きな得から離れていく
2.「道を極めた人」とは、自分が分かっていないことは何かを知り、その道の奥深さを知っている人である
3.小さなことをおろそかにする人にプロはいない。雑事に見えることをいかに極めるかが、凡人とプロの差を生む
他、全19項目

  • ■他人のお金を大事にできる人は成功できる

     タクシー運転手から聞く話のなかには、成功者のそれと同じくらい、深く含蓄があり、仕事や経営、人生において大事にしたい考え方が内包されているものだ。本書は、年間200台のタクシーに乗り、これまで2000人以上の運転手に出会ってきた経営コンサルタントの著者が、運転手との会話から得た気づきを紹介している。
     あるときタクシーに乗った著者が、「メーター、上げてないんじゃないですか?」と尋ねると「いや、私は大きな道路に出るまでは上げないんですよ」と、耳を疑うようなことを言った運転手がいた。タクシー運転手にとって、客のお金は他人のお金であるが、他人のお金を自分のお金と同じように大事にできる人が成功する。会社のお金も同じで「会社のお金だから」とムダ遣いする人は出世できない。前出の運転手の姿は、言外に「お客様にムダなお金を使わせたくない」という思いをにじませていた。それが評判を高め、めぐりめぐって自分のため、自社のためになるのだ。

  • ■一流の運転手ほど「知らない道はある」と言う

    また、タクシー歴46年という運転手に「もう東京で知らない道はないんじゃないですか」と尋ねたときには、「東京は道が変わるから、まだまだ分からない道があります」と意外な答えが返ってきた。10年以上タクシー運転手をしている人が大抵「まだまだ分からない道がある」と言う一方で、タクシー歴3年くらいの運転手にかぎって「100パーセント分かります」と答える。
     どんな仕事でも、3年やると自信がでてきて「自分一人でできる」と言うようになるが、それまでの成果は周囲の助けがあってこそのものだ。「自分一人でできる」といった勘違いをするのは一般のビジネスパーソンも同じである。「その道を極めた人」とは「分からないことがあることを知っている人」なのだ。ベテラン運転手たちは、慢心することなく、常に新しい道を探し、変化する道を覚えている。「分からない、まだまだだ」と思えることは自分の仕事に対して謙虚に向き合っている証拠である。

  • ◎著者プロフィール

    経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役。そのほかに現在、十数社の非常勤役員や顧問を務める。1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院へ留学(MBA取得)。東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現・セントケア・ホールディング)を経て現職。『あたりまえのことを バカになって ちゃんとやる』(サンマーク出版)など著書多数。