『幸せな職場のつくり方』(坂本光司&坂本光司研究室 著)

『幸せな職場のつくり方』

『幸せな職場のつくり方』(坂本光司&坂本光司研究室 著) 

著 者:坂本光司&坂本光司研究室
出版社:ラグーナ出版
発 行:2014/05
定 価:1,500円(税別)


【目次】
序.なぜ障がい者雇用で会社が幸せになるのか
1.なぜ経営者の志が輝くのか
2.なぜ社員が助け合うのか
3.なぜ職場がうまく回るのか
4.なぜ障がい者が生き生きと働くのか
5.なぜ地域に愛されるのか

  • ■心優しい経営が障がい者雇用の増大と賃金改善を可能にする

     著者の研究室には約70名の社会人大学生が在籍し、障がい者をとことん大切にする経営を実践している企業を題材にした現場研究を行っている。本書は、そんな院生たちの発案により、障がい者雇用の重要性と必要性を訴えるため、52社の取り組みを紹介したものである。
     障がい者の多くは、「働きたい」という思いをもっている。しかし、日本に住む障がい者約741万人のうち一般企業に就職しているのは、わずか38万人に過ぎない。障がい者雇用が進まない理由は、多くの企業に正面から雇用の拡大に取り組もうとする意識と意欲が不足しているからだ。職場環境や工程を障がい者に合わせて、時間をかけ、育てるという心優しい経営が十分に行われていない結果が、こうした現状を生んでいる。しかし、障がい者の雇用増大と賃金の改善は、決して不可能なことではない。障がい者は、できないのではなく、企業がやらせない、それができるまで支援をし続けていないだけなのである。

  • ■ワイン造りで障がい者の自立とコミュニティビジネスを結びつける

     栃木県にあるココ・ファーム・ワイナリーは、隣接する指定障害者支援施設「こころみ学園」から原材料のぶどうを仕入れ、ワインなどに加工して販売している。ココ・ファームは1958年、特殊学級の担任をしていた川田昇先生が、「生徒たちがイキイキと働いていける場所をつくりたい」と、子どもたちと一緒に急斜面を開墾したのが始まりだ。ぶどう畑は、知的障害のある彼らにとって体を動かす訓練の場所でもあった。質の高いワイン造りをめざし、カリフォルニアのナパバレーからワイン造りのプロも招聘した。そして2000年、同社のワインは九州・沖縄サミットの晩餐会で乾杯に用いられ、一躍有名になったのである。
     しかし、同社は障がい者が造っていることをあえて声高に言わない。それは「本当にココ・ファームのワインを気に入って買ってもらいたい」からだ。品質で勝負しなければ、どの道長くは続かない。ココ・ファームはそうして知的障がい者の自立とコミュニティビジネスとをきちんと結びつけている。

  • ◎著者プロフィール

    法政大学大学院政策創造研究科教授。1947年、静岡県生まれ。静岡文化芸術大学教授等を経て現職。専門は中小企業経営論、地域経済論、福祉産業論。経済産業省委員会委員などの公務も多数兼任。これまでに訪問調査、アドバイスした会社は7000社を超える。『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)など著書多数。坂本光司研究室には、坂本教授の思想・理念を学ぶべく集まった社会人ゼミ生が約70名所属している。