『地域再生のための経営と会計』 ‐産業クラスターの可能性(二神 恭一/高山 貢/高橋 賢 編著)

『地域再生のための経営と会計』 ‐産業クラスターの可能性

『地域再生のための経営と会計』 ‐産業クラスターの可能性(二神 恭一/高山 貢/高橋 賢 編著) 

編著者:二神 恭一/高山 貢/高橋 賢
出版社:中央経済社
発 行:2014/04
定 価:2,600円(税別)


【目次】
序.地域の再生に向けて
1.産業クラスターの意義と課題
2.食料産業クラスターの事業化の実態とその可能性
3.地域資源の活用と食料産業クラスター形成の課題―青森県の事例
終.産業クラスターによる地域再生の可能性

  • ■農業を基幹産業とする地域は地域主導型産業クラスターが最適

     新興国との競争激化で製品の価格競争力が失われたことで国内製造業が衰退、産業の空洞化が起き、地域の経済活動にマイナスの影響が生じている。こうした地域経済の閉塞感を打破し、地域に雇用と活力を取り戻すための解決策として注目されるのが、全国各地で進められている産業クラスター計画だ。産業クラスターとは、「特定分野における関連企業、専門性の高い供給、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学、業界団体)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力しつつある状態」と定義されている。本書では、農業を基幹産業としている地域を対象とした新たな産業クラスターモデルを検討し、構築していくための方法を提案している。
     農業を基幹産業とする地域が国内外の競争に打ち勝つためには、地域内外の同業および異業種間でネットワーク組織を形成し、地元の農産物や経営資源を活用した新たな製品を開発・生産・販売していくための地域主導型産業クラスターとして展開していく必要がある。

  • ■マネジメント能力を有したコーディネーターの存在が成功のカギ

     青森県板柳町では、りんご価格の大暴落を契機に町長がリーダーシップを発揮し、特産品のりんごを中核とした地域振興事業を実施している。この事業を支援する中核組織のふるさとセンターは、町が掲げた「日本一のりんごの里づくり」というミッションに基づき、りんごによる地場産業おこし、体験農業の推進、新しい農業技術の提供という目的を実現するため、製品開発の組織化や、りんごの加工品等の販路開拓に取り組んだ。その結果、生産者の所得向上、雇用機会の創出、付加価値型農業の推進、民芸品の創出、町の知名度向上という五つの効果を生み出したのである。
     このように産業クラスターを有効的に進めていくには、事業全体のマネジメント能力を有したコーディネーターを置き、事業のビジョンや戦略を明確にすることが重要だ。そしてそれを関係者が共有して、イノベーションを創出し、具体的な成果を生み出す事業を計画・実行するための支援体制とインフラを整備していく取組みが必要となる。

  • ◎編著者プロフィール

    二神恭一:公益財団法人荒川区自治総合研究所理事・所長。あらかわ経営塾長。商学博士(早稲田大学)。1931年愛媛県生まれ。早稲田大学名誉教授。
    高山貢:青森中央学院大学経営法学部教授(地域経済)。1951年青森県生まれ。青森銀行などを経て現職。
    高橋賢:横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授。博士(商学、一橋大学)。1968年長崎県生まれ。会計検査院特別研究官なども兼任。