『魂の商人 石田梅岩が語ったこと』 ‐ビジネスの極意と人生の知恵(山岡 正義 著) 

『魂の商人 石田梅岩が語ったこと』 ‐ビジネスの極意と人生の知恵

『魂の商人 石田梅岩が語ったこと』 ‐ビジネスの極意と人生の知恵(山岡 正義 著)  

著 者:山岡 正義
出版社:サンマーク出版
発 行:2014/08
定 価:1,700円(税別)


【目次】
序.富への道を説いた“魂の商人”がいた
1.正直こそが、富をもたらす
2.勤勉こそが、安らぎをもたらす
3.倹約こそが、平和をもたらす
4.自立してこそ、強みを生かせる
5.天地自然に即して生きる
6.百年企業が、日本を強くする
終.日本よ、いまこそ“梅岩”に帰れ!

  • ■「正直」を重視した商人道を説いた石田梅岩の思想を現代に結びつける

     石田梅岩は、江戸時代の前中期に活躍した商人、学者・思想家である。「石門心学」として後世に遺された彼の思想体系は、現代にも十分通用する「経営の本質」をつくものでもある。本書は、梅岩が説いた「商人道」を、欧米の価値観と比較、また現代の企業経営や個人の働き方に結びつけながら解説している。
     梅岩は商いにおける「正直」の必要性を繰り返し強調している。正直であることで、人から信用される。信用されることでビジネスは成功に向かう。自己の内面のモラルに照らして、それに反することは、たとえ法に違反しないことであってもしてはならない、と説いた。西洋における善悪の判断基準は、神や法など「外部」にある。それに対し日本人は「人はごまかせても、自分の心はごまかせない」というように、自分の心の中に“ものさし”をもつ傾向がある。梅岩が伝えた日本人特有の「正直さ」は、日本人の集合意識として現代にいたるまで受け継がれている。

  • ■働くこと、勤勉さの中に「心のやすらぎ」を求める日本人特有の労働観

     石田梅岩の代表的著作『都鄙(とひ)問答』には「勤勉によってもたらされる安楽こそ、労働から得られる最上の喜び」という内容の記述がある。梅岩は、働くことの意義や目的を、報酬ではなく「心の安らかさ」を得ることに置いていた。これは、労働は苦役であり、休暇や家族との時間で安らぎを得る、という欧米の労働観とは異質のものだ。日本人にとって労働や勤勉は、世間や周囲の人の役に立つものであり、そのことに喜びを見いだす。梅岩はそのように考えた。
     また梅岩は「倹約」の大切さも訴えている。彼の言う倹約とは、私欲のためのもの、すなわち“ケチ”ではない。倹約することで生まれた余剰を世間のために使う。そのような倹約を常日頃から心がけていれば、人間が本来もっている正直という徳を取り戻すことができる、と梅岩は説いたのだ。現代の企業が社会貢献を求められる傾向を考えると、梅岩の思想に驚くべき先見性があることがわかる。

  • ◎著者プロフィール

    経営コンサルタント。パートナーコンサルタンツ代表。1947年神戸市生まれ。中央大学卒業後、東京商工会議所において経営指導員として活動。現在、「人を生かす経営・人が生きる経営」をモットーに、経営を人の視点で見直すコンサルティングを展開。石田梅岩について25年にわたり研究を重ね、彼の「商人道」とその精神を伝える「石門心学」の普及に努めている。また、百年企業(長寿企業)に着目し、企業の持続的成長の秘訣を調査・研究している。