『自分でつくるセーフティネット』 ‐生存戦略としてのIT入門(佐々木 俊尚 著)

『自分でつくるセーフティネット』 ‐生存戦略としてのIT入門

『自分でつくるセーフティネット』 ‐生存戦略としてのIT入門(佐々木 俊尚 著) 

著 者:佐々木 俊尚
出版社:大和書房
発 行:2014/08
定 価:1,200円(税別)


【目次】
1.セーフティネットは自分でつくる時代
2.総透明社会の時代
3.ゆるいつながりの時代
4.見知らぬ人を信頼する時代
5.「善い人」が生き残る時代
6.生き方そのものが戦略になる時代

  • ■“弱いつながり”で信頼を保証するSNSが現代のセーフティネットになる

     終身雇用制が崩れ、非正規雇用率が高まる現代の日本では、従来、個人を外の世界から隔てる「箱」であった会社が、セーフティネットとして機能しなくなっている。では、いまは何をセーフティネットとして生き延びるための戦略をつくればいいのか。本書では、その役割をフェイスブックをはじめとするSNSによる“弱いつながり”に求めている。
     フェイスブックは、人間関係を“気軽に”維持していくための道具でもあり、自分という存在の信頼性を保証してくれるものでもある。書き込みや写真のアップロード、友達の一覧などによって自らの人間性をさらけ出すことで、他人からの「信頼」が得られる。
     フェイスブックのゆるい人間関係からは、有用な情報が得られることが多い。なぜなら共通点の多い「強いつながり」よりも、相手が自分の知らない情報を持っている可能性が高いからだ。そして相手からの信頼があれば、その情報を提供してもらえる可能性も高い。

  • ■寛容かつ与えることで「善い人になる」ことが生存戦略に

     現代社会は、ネット、SNSによって自分の善い面も悪い面もあからさまになる「総透明社会」だと著者は言う。そういった社会では「善い人」であることが大切だ。かつて「善い人」というと、お人好しで損をする人というイメージもあった。しかし現代では、善い人のほうが得をすることが多い。総透明社会では「悪いこと」を隠し通すことが難しいからだ。
     現代では「善い人」であることが重要な生存戦略だ。「会社のために黙々と仕事をする」よりも「広く社会のために善いことをする」ことがセーフティネットになる。
     善い人であるためには、まず、他人に対して寛容であることだ。多様性を受け入れ、人が自分と違うからといって攻撃したりしない。そして「与える人」であること。自分のもつ知識や情報、モノなどを積極的に人に与える人が、最終的には得をする。善い人になることは、いまでは道徳や宗教とは関係なく、現代人にとって必須の戦略といえるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    作家・ジャーナリスト。1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て、フリージャーナリストとしてIT、メディア分野を中心に執筆している。著書は『レイヤー化する世界』(NHK出版)、『「当事者」の時代』(光文社)、『キュレーションの時代』(筑摩書房)、『簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)など。