『あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?』 ‐社会を良くする唯一の方法は「ビジネス」である(北原 茂実 著)

『あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?』 ‐社会を良くする唯一の方法は「ビジネス」である

『あなたの仕事は「誰を」幸せにするか?』 ‐社会を良くする唯一の方法は「ビジネス」である(北原 茂実 著) 

著 者:北原 茂実
出版社:ダイヤモンド社
発 行:2014/08
定 価:1,400円(税別)


【目次】
1.日本を襲う「2030年問題」
2.善意では、社会は1ミリも動かない
3.ドミノの「最初の1枚」を倒す
4.「リバース・イノベーション」で社会を変える
終.「経世済民」のために働く

  • ■自分以外の誰かを幸せにする仕事=医療の理想的なかたちを実践とともに論じる

     独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によると、2030年における日本の産業別の就業者数の第1位は「医療・福祉」になるという。本書では、近い将来日本の基幹産業となる医療を、自分以外の誰かを幸せにする仕事と定義。著者自らの取り組みを紹介しながら、医療を「総合生活産業」として、すべての人が関わる仕事とするための改革を論じている。
     現在の医療費抑制政策が続けば、医療はワーキングプアの仕事となってしまう。それでは医療システムそのものが機能しなくなる、と著者は言う。国民皆保険と診療報酬に縛られた医療には自由がない。医療の「定価」を国が決めており、日本の医療はたくさんの「できないこと」でがんじがらめにされているという指摘だ。
     著者が常々主張しているのは、医療の自由化を進めること。患者さんに負担をかけることなくしっかりと利益を出せる体制をつくり、これまで国が認めてきた医療とは別の「新しい医療のかたち」を求めている。

  • ■ワンコインドックやボランティアシステムで地域住民の健康意識を高める

     著者が2010年にJR八王子駅前の複合商業施設の1階にオープンしたクリニックでは、試験的に「ワンコインドック」を実施している。これは、500円で簡易的な健康診断が受けられるというものだ。定期的に利用することで、地域住民一人ひとりに、自分の健康状態をチェックする習慣がつく。そうして住民の健康意識を高め、病気になりにくい街をつくることが狙いだという。
     さらに斬新な取り組みに、地域住民や患者さんのご家族によるボランティアシステムがある。その目的は「医療者」と「患者」の垣根を取り払うこと。たとえば家族が入院したときに、ボランティアとして働けばポイントを加算し、ポイント数に従い医療費を減額する。ボランティアの内容はさまざまだ。体力のある人は介護の手伝い、理容師は患者さんの散髪など。また、医療知識をビデオ教材などで学ぶこともポイント加算の対象になる。これも地域に健康意識を根づかせるためのものだ。

  • ◎著者プロフィール

    脳外科医、経営者。医療法人社団KNI(Kitahara Neurosurgical Institute)理事長。1953年、神奈川県生まれ。東京大学医学部を卒業後、同大学病院脳神経外科にて研修。1995年、東京都八王子市に北原脳神経外科病院(現・北原国際病院)を開設。カンボジア、ラオス等の海外において「総合生活産業としての医療」を輸出するビジネス的な試みは、大きな注目を集めている。著書に『「病院」がトヨタを超える日』(講談社プラスアルファ新書)等がある。