『知的資本論』 (増田 宗昭 著)

『知的資本論』 ‐すべての企業がデザイナー集団になる未来

『知的資本論』 (増田 宗昭 著) 

著 者:増田 宗昭
出版社:CCCメディアハウス
発 行:2014/10
定 価:1,800円(税別)


【目次】
序.武雄市長・樋渡啓祐氏との対話 知的資本の時代へ
起.デザイナーしか生き残れない
承.書物たちが革命を起こす
転.実は夢しか実現しない
結.会社のカタチはメッセージ
終.副産物が幸福感を生み出す

  • ■デザイナーでなければ生き残ることができない

     佐賀県武雄市は人口5万人ほどの地方自治体であるが、1年間に100万人の来場者を数える「武雄市図書館」がある。この奇跡的な図書館を、武雄市長とともに創り上げたのが、TSUTAYAを運営するCCC株式会社だ。本書では、同社のCEOである著者が、新しい時代における“企画”の意味を読み解いている。
     これからはデザイナーでなければ生き残れないと、著者は強調する。企業はすべて、デザイナーの集団となり、そうなれない会社は、これからのビジネスシーンで成功を収めることはできない。商品にとってデザインとはおまけ的要素ではなく、本質に深く根ざした価値なのだ。今後の日本を創るのはデザインで、そのために必要なのは知性である。これまで考えられてきたような財務的な資本の大小が企業活動の成否を決定する時代は過ぎ去り、社内に“知的資本”がどれほど蓄積され、そして発揮させられるかが企業の推進力を左右する時代になるのだ。

  • ■売るべきなのは、その本に書かれている提案

     2011年、東京都渋谷区に「代官山蔦屋書店」がオープンした。当初、4000坪もの巨大な書店を創っても、“活字離れ”が叫ばれるなかで成功するはずがないという懐疑的な意見が多かった。しかし著者は、本が売れないのは売り方に問題があり、書店は本を売っているからダメなのだと考えた。顧客にとって価値があるのは、本という物体ではなく、そこに盛り込まれている提案のほうなのだ。
     そこでCCCでは、本の形態などによる分類ではなく、その提案内容による分類で書店空間を再構築した。「代官山蔦屋書店」に足を踏み入れてみれば、旅、食、文学、アート、クルマ……といったジャンルごとにゾーニングされ、さらにその中でも内容の近しいもの同士が、単行本や文庫本といった枠を飛び越えて横断的に固められている。ここを訪れた人は、例えば“ヨーロッパを旅するなら、こんな文化に触れてみてはどうですか?”といった提案そのものを受け取ることができるのである。

  • ◎著者プロフィール

    日本全国に1400店以上を数えるTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)代表取締役社長兼CEO。1951年生まれ、大阪府出身。同志社大学卒。1983年に「蔦屋書店枚方店」をオープンさせ、1985年にCCCを設立。同社は2003年に業種横断的な共通ポイントサービス「Tポイント」をスタートさせるなど多様な事業を展開。2013年、「武雄市図書館」の運営を開始、開館13ヵ月にして入館者が100万人を突破するなど大きな話題を集めている。