『チーム・ブライアン』(ブライアン・オーサー 著)
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■羽生選手、キム・ヨナ選手を育てた名コーチが指導方法、考え方を語る
羽生結弦選手、キム・ヨナ選手など、フィギュアスケート界の大スターたちを育てたカナダ人コーチ、ブライアン・オーサー氏。同コーチは、専門コーチを集めた「チーム・ブライアン」を結成し、集団で一人の選手を指導するスタイルをとっている。本書は、オーサー氏へのインタビューおよび羽生選手との対談から、チーム・ブライアンによる指導方法、方針、選手の才能を伸ばす秘訣などを探っている。それらは、ビジネスにおけるコーチングにも十分ヒントを与えてくれるものである。
フィギュアスケートには、スケーティング、ジャンプ、スピン、ステップなど多くの要素があり、選手はそれをすべて高いレベルでこなさなくてはならない。それゆえ、オーサーコーチは、それぞれの専門家を集め、要素ごとに最高の指導ができるようにした。オーサー氏の役割は、選手の能力と長所を見つけ最適なコーチの組み合わせを見つけること、全員をコーディネートすることだ。 -
■パッケージング、マネージング、モチベーティングの三つをテーマに
オーサー氏は、コーチとして自分のすべきテーマをパッケージング、マネージング、モチベーティングの三つに絞ってきた。
パッケージングとは「正しいスケート」を教えること。音楽と振付、正統派の構成、衣装など演技を構成するすべてが洗練され、一体感をもつように指導していく。マネージングは、練習計画や大会出場スケジュールなどを管理し、準備や手配をすることだ。
モチベーティングは、選手をやる気にさせることだ。一人ひとりの選手の個性を見極め、それに合ったアプローチが望まれる。そして何よりもコーチ自身がスケートを楽しみ、エネルギッシュであることが大切だ。
オーサー氏が8年間のコーチ経験で成し遂げたと感じるのは「リンクの上にコミュニティを作る」ことだという。すべてのコーチが選手の成功を自分の成功と感じる、チームの一員であることに喜びを抱いていることこそ、チーム・ブライアンの“強さ”の最大の秘訣なのだろう。 -
◎著者プロフィール
フィギュアスケートコーチ。1961年カナダ生まれ。フィギュアスケート男子シングルの選手として、1984年サラエボ、1988年カルガリーとオリンピック2大会連続で銀メダルを獲得。1987年世界選手権優勝。 1988年に引退した後はプロスケーターとして世界各国でアイスショーに出演。2006年、キム・ヨナの指導をきっかけにコーチに専任するようになり、現在は主に男子シングルの羽生結弦とハビエル・フェルナンデスの指導にあたる。