『新 クリエイティブ資本論』 ‐才能が経済と都市の主役となる(リチャード・フロリダ 著)
-
■時代の変化や新しいデータをもとにクリエイティブ・クラスの台頭を再検証
経済の停滞を打開するために、人々の創造性が原動力の一つになることは疑いの余地がない。10年前に「クリエイティブ・クラス(階層)」の台頭を予測し、論議を呼んだ書の新版である本書では、新たなデータや社会経済の動きを踏まえ、クリエイティビティがつくる未来を占っている。
かつての農業革命、産業革命においても、「何かを作りだす」人たちは重宝され、時代を動かしてきた。だが、この数十年間、我々はとりわけクリエイティビティをはっきりと意識し、それに基づく行動をとることが重視されるようになってきている。
クリエイティビティは、何も大がかりな発明や新商品を世に送り出したり、新奇性の高い起業を行ったりということだけに限らない。製品や、その製造プロセスを漸進的に改善していくことも含まれる。経済にクリエイティビティが必要とされるということは、さまざまな業務や行動にクリエイティブな要素が求められるということだ。 -
■クリエイティビティを測定するには技術、才能、寛容性の三つを指標に
クリエイティブ・クラスの分布する地域や、その経済効果を理解するために、著者自らが「経済成長の三つのT」と呼ぶ指標を用いる。それは「技術(technology)」「才能(talent)」「寛容性(tolerance)」だ。本当の意味でのイノベーションと持続的経済成長のためには、この三つすべてが一ヵ所で提供される必要がある。
「技術」が成長の鍵となることに異論のある人はほとんどいないだろう。二つめの「才能」とは人的資本のこと。スキルと野心があり、高学歴で起業家精神にあふれる人々の存在は間違いなく経済発展の原動力となる。
「寛容性」は、多様性を受容することだ。新しいアイデア、イノベーションは技術と才能が多様性と相互作用を起こすことで生まれる。著者らの研究によれば、移民、芸術家、ゲイ、ボヘミアンを受け入れて人種の融合を歓迎する場所と、質の高い経済成長をする場所には強い相関があるという。 -
◎著者プロフィール
トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント教授。同スクールの地域競争力に関する研究所のディレクターも務める。ニュージャージー州ニューアーク出身。カーネギーメロン大学ハインツ公共政策スクール、H.ジョン・ハインツ3世記念講座教授を務めていた時に上梓したThe Rise of the Creative Classはアメリカでベストセラーとなったうえに15ヵ国以上で翻訳刊行され、一躍、世界で最も注目される都市経済学者となった。