『50歳からの教養力』(江上 剛 著)
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■「教養力」とは「生きる力」
現在は、コンピューター化が進み、誰もがインターネットで繋がっている。そのため、人は、脳に蓄積されたデータをデジタル世界に移し替えてしまい、脳の中はからっぽになり、その結果、思考しなくなっている。しかし、人が人であり続けるためには、日々、何かを思考する=「哲学する」ことが重要だ。「哲学する」ことで「教養力」が身につくからだ。
本書は、銀行員として第一線で活躍し、49歳で作家デビューした後も活躍を続ける著者が、「一生現役でいるための教養力」を伝授している。
「教養力」とは、大学などで覚える「知識力」ではなく、日々の生活の中で思考してきたものが、脳の中にデータとして蓄積され、さらに再生産されたものである。もし「教養力」があれば、他人の動向など関係なく、我が道を行けばいい。その結果、最悪の事態が起きたら、ふたたび哲学し、それを乗り越えて行けばいい。その乗り越える力が、「教養力」であり、「生きる力」なのである。 -
■50歳は未知の分野へ踏み出す転機の年
日本人の寿命からすると、50歳は折り返し地点を少し過ぎた年齢である。著者の友人は52歳で郷里に帰って居酒屋を開いた。それまでに郵便局で働きながら調理師免許を取得するなどして長年の夢を叶えたのだ。
50歳は、サラリーマンとしてそのまま生きるか、何かを決断するかの転機の年である。50歳まで走り続けて来た人は、自分でも気がつかないうちにいろいろなところが消耗している。そういう人ほど、大きなミスを起こしがちで、自分では登り続けているつもりなのに実は転がり落ちていたということもありうる。逆に、50までうだつが上がらなかった人も、時代が追いついて、必要とされる場所が見つかる可能性がある。
今まで全く経験したことのない分野へ踏み出していくのは不安もあるが、楽しいことでもある。子供の頃になりたかった職業などを思い出してみよう。そうすると次の進むべき道が見えてくる。後は勇気を出して一歩を踏み出したら、今までにない充実感を手に入れることだろう。 -
◎著者プロフィール
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。本部企画、人事関係、高田馬場・築地各支店長を経て2003年に退行。1997年「第一勧銀総会屋事件」に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。銀行員としての傍ら、2002年『非情銀行』で小説家デビュー。『失格社員』(新潮社)はベストセラーに。『55歳からのフルマラソン』(新潮新書)など著書多数。