『道端の経営学』 -戦略は弱者に学べ(マイケル・マッツェオ/ポール・オイヤー/スコット・シェーファー 著)

『道端の経営学』 -戦略は弱者に学べ

『道端の経営学』 -戦略は弱者に学べ(マイケル・マッツェオ/ポール・オイヤー/スコット・シェーファー 著) 

著 者:マイケル・マッツェオ/ポール・オイヤー/スコット・シェーファー
監訳者:楠木 建
訳 者:江口 泰子
出版社:ヴィレッジブックス
発 行:2015/02
定 価:1,850円(税別)


【目 次】
 プロローグ 軽い気持ちでドライブに
 1.事業規模を拡大する
 2.参入障壁を築く
 3.商品の差別化を図る
 4.価格を適切に設定する
 5.ブランドを管理する
 6.交渉を有利に進める
 7.人を雇う
 8.インセンティブ制を導入する
 9.権限を委譲する
 10.大企業(ビッグボーイ)と戦う
 エピローグ 戦略はそれ自体が動く目標である

  • ■全米各地のスモールビジネスの戦略を経営学理論をもとに分析

     経営戦略を考える際のモデルとして、世界的に有名な大企業のケースが使われることが多い。しかし、大企業に勝るとも劣らない優れた戦略を実行している地方の中小・零細企業は世界中に数多存在するはずである。本書では、そんな問題意識のもと3人のビジネススクール教授が全米を旅する。さまざまな地域のスモール・ビジネス(中小・零細企業)を取材し、経営学理論をあてはめ分析を加えている。
     3人の教授は、旅の前にあるシンプルな法則にたどり着く。3人の一人、マイケル・マッツェオ教授の名を取り「マイクの法則」と呼ばれるその法則の基本は、すべての戦略的課題の答えが「場合によりけり」だということだ。
     たとえば、新規参入をめざすスモールビジネスが、品質よりも価格で勝負するウォルマートのような戦略をとるか、それとも何より高品質を重視するアップルを見習うべきか。それは、その企業が抱える課題や市場の状況に「よりけり」ということになる。

  • ■「規模の経済」を働かせ事業拡大を図ることが不可能なケースも

     3人の教授たちはアーカンソー州の矯正治療専門のクリニック「ブレイシズ・バイ・バリス」を訪問する。同クリニックは、新規開業や既存の医院を買い取ることで、近年、大幅な事業拡大に成功している。
     矯正治療の歯科医は毎日開ける必要はない。そのためバリスではそれぞれのサテライト医院に歯科医などのスタッフを常駐させず、必要に応じ出張させるスタイルをとっている。
     管理オフィスはハブ機能を担い、そこで請求業務と保険業務を一元管理する。変動費を低く抑えることで「規模の経済(スケールメリット)」を働かせているのだ。
     一方、オレゴン州の独立系コーヒーショップ「シルク・エスプレッソ」では規模の経済を活用した事業拡大は難しい。一人の経営者が厳密に管理するコーヒーの“質の高さ”で勝負しているからだ。事実同店は一度チェーン化に失敗している。どの店でも高品質を維持しようとして、経営者が疲れ果ててしまったのが原因だ。

  • ◎著者プロフィール

    マイケル・マッツェオ:ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院准教授。MBAコースで事業戦略を教えている。スタンフォード大学で経済学博士号を取得。10歳の息子とともにシカゴに住んでいる。
    ポール・オイヤー:スタンフォード大学経営大学院教授。イェール大学でMBA、プリンストン大学で経済学博士号を取得。2人の子どもたちとカリフォルニア州スタンフォードに暮らす。
    スコッ卜・シェーファー:ユタ大学デイヴィッド・エクルズ経営大学院教授。スタンフォード大学経営大学院で経営学博士号取得。共著に『戦略の経済学』がある。ソルトレイクシティで2人の子どもたちと暮らしている。