『超高齢社会』 (辻 哲夫 著)

『超高齢社会』‐第3弾 日本のシナリオ

『超高齢社会』 (辻 哲夫 著) 

総監修:辻 哲夫
出版社:時評社
発 行:2015/03
定 価:1,500円(税別)


【目次】
 1.総論‐明るい超高齢社会の構築に向けて、いま国の一大転換期
 2.霞が関の取り組み
 3.自治体事例
 4.関連団体の取り組み
 5.医療法人の取り組み
 6.先進企業の取り組み

  • ■明るく安心できる超高齢社会を築けるかどうかの岐路に立つ日本

     日本社会は、世界が経験したことのない未曽有の超高齢社会に差しかかっている。核家族化や少子化の急速な進展に伴い、高齢者のみの世帯が普通となるなか、ICT(情報通信技術)による健診・医療・保険などのデータを活用しつつ、諸課題の解決を図るべき時期となった。
     日本人高齢者の自立度データによると、生活習慣病にさえ気を付ければ、老いの兆候が始まるのは75歳以後という。日本の高年齢者はどんどん元気になってきている。いまや65歳で仕事の第一線から身を引くには若すぎ、75歳までは普通に働けると考えるべきである。
     したがって、要介護の原因となる生活習慣病や虚弱化を予防し、年を取っても生活者として元気に暮らせる社会システムを確立することが我々の目標となる。それは、若い世代が安心して子どもを産める共生の社会でもある。この超高齢社会を、長生きして良かったと笑顔で一生を終えられる社会にできるかどうか、日本はまさにその岐路に立っている。

  • ■高齢者の健康にもっとも重要なのは仲間と「しゃべる」こと

     2014年7月、「まちの健康研究所 あ・し・た」は、東京大学高齢社会総合研究機構が核となり、健康に関心のない高齢者層にアプローチしサービスする施設を目指して、千葉県柏市につくられた。運動、社会参加、食を表す「あるく」「しゃべる」「たべる」から命名されたこの研究所では、健康相談・健康測定から運動アドバイスや栄養指導などの健康情報提供までが行われている。
     発足以来の経験から分かったことは、「あるく」「しゃべる」「たべる」の中で「しゃべる」がもっとも重要だということ。「しゃべる」さえできていれば、特に意識せずとも「あるく」「たべる」は自然にできてくる。家に引きこもったままでは誰ともしゃべらず、食事もいい加減で、運動もしない。しかし、話す相手がいて自宅以外の場所で過ごす生活が出来ると、体も動かすし、人と食事をすることで栄養面も豊かになる。山登りや釣りなどの仲間ができれば、けっこうな運動量にもなるのだ。

  • ◎総監修者プロフィール

    社会総合研究機構教授、2011年同機構特任教授として現在に至る。著書・論文多数。
    ていれば、特に意識せずとも「あるく」「たべる」は自然にできてくる。家に引きこもったままでは誰ともしゃべらず、食事もいい加減で、運動もしない。しかし、話す相手がいて自宅以外の場所で過ごす生活が出来ると、体も動かすし、人と食事をすることで栄養面も豊かになる。山登りや釣りなどの仲間ができれば、けっこうな運動量にもなるのだ。