『なぜ、わかっていても実行できないのか』 ‐知識を行動に変えるマネジメント(ジェフリー・フェファー/ロバート・I・サットン 著)
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■大切なのは自分自身の行動や実践、失敗から学ぶこと
世の中にはビジネス書があふれ、優秀なコンサルタントもたくさんいる。それなのに人々は、マネジャーや組織のやり方はいっこうに変わらないと不満を抱いている。また、コンサルタントが与えるのは知識ばかりで、実際にそれらをどう製品開発に生かせばよいかが提案されることはほとんどない。本書で著者らは、企業が知識を行動に変えられない状態を「知識と行動のギャップ」と呼び、この問題の原因と解決法を提案している。
「知識と行動のギャップ」の解決法は、訓練や実践を通して学び、ときには失敗からも学ぶという、とても単純なものである。自分自身の行動や実践から学べば、「わかっているのに実行できない」という状態は生じない。
その好例が米軍だ。訓練の中心は、模擬戦闘、教練、実践さながらのシミュレーションなど通じ、戦闘時の行動を徹底的に体で覚えること。モトローラやゼネラル・エレクトリックなどの企業が、米軍のやり方をリーダーシップ研修の参考としている。 -
■「恐怖心」や不要な「競争心」は適切な行動を阻害する
行動を重視する文化をつくるには、ものごとがうまくいかない場合に企業がとる対応が重要となる。失敗や間違いを叱責されたり、職歴に傷がつくことになったりするなら、人は失敗を恐れて、行動を起こさなくなってしまう。ましてや人は、プレッシャーや恐怖心があると、思いがけない過ちを犯したり、無分別な行動に走りかねない。企業内に必要なのは、「失敗したらどうなるのか」という否定的な思考ではなく、「失敗をどこまで許すか」という考え方だ。
「競争」という言葉にも気をつけなければならない。経済システムに競争原理が働いているのは当然のことだが、経営にも内部競争が必要だという考えは誤りだ。むしろ社内には、一人ひとりの成功が互いの成功に結びつくことを理解した協力体制を構築すること。互いに張り合い、ライバル視するような土壌では、知識の伝達も共有も期待できない。必要なのは社内競争ではなく、組織ぐるみで市場での戦いに勝つことなのだ。 -
◎著者プロフィール
ジェフリー・フェファー:スタンフォード大学ビジネススクール教授。専門は組織行動論。カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード・ビジネススクールなどでも教鞭をとり、民間企業の取締役や学術誌の論説委員の経験も持つ。
ロバート・I・サットン:スタンフォード大学エンジニアリングスクール教授。専門は組織行動論。同大学の職業・技術・組織研究センターディレクター、テクノロジー・ベンチャー・プログラム研究所所長を兼務。経営者向けセミナーや企業へのコンサルティングも精力的にこなす。