『人口減少時代の都市ビジョン』(樫野 孝人 著)

『人口減少時代の都市ビジョン』

『人口減少時代の都市ビジョン』(樫野 孝人 著) 

著 者:樫野 孝人
出版社:カナリアコミュニケーションズ
発 行:2015/03
定 価:1,000円(税別)


【目 次】
1.地方分権が日本を変える理由
2.街のエンジンとは何か?
3.少子高齢化社会の新しい都市モデル
4.神戸の新・都市ビジョン

  • ■「人を集めるエンジン」を強化することで繁栄を築く都市経営ビジョンを示す

     人口減少時代が到来し、都市経営にもこれまでとは異なる施策が求められている。本書では、民間企業出身で京都府や広島県の自治体経営に関わってきた著者が、マーケティングの手法も取り入れた、神戸市をモデルとする新しい都市経営ビジョンを示している。
     一つの街の行く末には、人口の増減とそれに伴う税収の動向が大きく影響する。衰退や破綻を防ぐには、都市人口を維持しなければならない。そのためには、「人が集まる」仕組みをつくることを著者は主張する。人が集まるところには活気があり、情報もお金も集まる。豊かな自然、城や神社などの文化遺産、伝統技能、優良企業の立地など、「人を集めるエンジン」を強化、あるいは創造していくこと。それが都市繁栄の長期ビジョンになるという。
     国や自治体が進める「女性が働きやすい環境づくり」は重要なことではあるが、即効性は低いと、著者は指摘。保育所の整備などには、どうしても時間がかかるからだ。

  • ■働きたいシニアが働きたい分量だけ、いつでも働ける環境を用意すべき

     著者が注目するのは65歳以上のシニアだ。彼らは、すでに子育てが終わって時間があり、仕事の知識・経験が豊富。ゆえに「シニアが働きやすい環境づくり」を積極的に支援すれば、早期に効果が現れる可能性が高い。シニアには、かつてのように企業戦士になってもらう必要はない。「働きたいシニア」が「働きたい分量」だけ、「いつでも働ける環境と機会」が用意されていることが重要なのだ。
     著者はいま「ポートピア2018」の開催を提唱している。これまで神戸市が造ってきたハコモノの上に上質のコンテンツを載せ、地元産業と連携した新しい都市プロモーションのひな型をつくる構想だ。2020年の東京オリンピックで日本を訪れる外国人に「神戸にも立ち寄りたい」と感じてもらえるよう、有名ソムリエも認める灘の酒、地元に根づくBAR文化、映画発祥の地など、地元産業や文化、街並みなどの地場コンテンツを大々的にプロモートしようというアイデアだ。

  • ◎著者プロフィール

    (株)CAP代表取締役社長、神戸志民党代表、KRP総研理事。1963年生まれ。神戸大学経済学部卒業。(株)リクルートで人事、雑誌編集長、福岡ドーム(現ヤフオクドーム)でイベントプロデュースを担当後、2000年(株)アイ・エム・ジェイの代表取締役社長に就任し、ジャスダック上場。国内最大手のweb構築企業に成長するとともに、「NANA」「るろうに剣心」などのヒット映画も製作。2013年神戸市長選に立候補するも僅差で惜敗。