『メンバーの才能を開花させる技法』(リズ・ワイズマン/グレッグ・マキューン 著)
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■メンバー一人ひとりの力を引き出す「増幅型リーダー」の行動特性を分析
組織のリーダーは、自身の能力だけで成果を上げることは難しい。メンバー一人ひとりの力を引き出し、十分に発揮させることができるのが、優秀なリーダーの条件といえる。本書では、そんな理想的なリーダーを「増幅型リーダー」と名づけ、逆にメンバーの知性や能力を破壊する「消耗型リーダー」と対比しながら、その行動特性を分析。増幅型リーダーになるためにはどうしたらいいか、心構えと具体的方法を論じている。
増幅型と消耗型はどちらも優秀なリーダーだが、メンバーの能力を最大限伸ばそうとする増幅型に対し、消耗型リーダーは、何もかも自分か、自分の周囲の限られた数人だけで決める。すべてのメンバーを「命令にただ従うだけ」の状態に置き、彼らの活力とやる気を奪ってしまうのだ。
著者らは、増幅型リーダー特有の要素を「才能のマグネット」「解放者」「挑戦者」「議論の推進者」「投資家」という「五つの習慣」にまとめている。 -
■「聞き上手」になり、メンバーが自由にアイデアを共有できる場をつくる
増幅型リーダーが引き出す才能は、表面的なスキルだけではない。報酬や褒美がなくても自発的にできるものであり、必要以上の努力をしなくても自然に身についているものである。たとえばエクセルの達人と呼ばれる人がいても、彼のエクセル技術はここで言う才能ではない。増幅型リーダーは、「エクセルをうまく使えるのならば、データのモデリングに優れているのかもしれない」「それならば論理的思考に秀でているのだろう」というように、深いレベルまで才能を探っていくのだ。
増幅型リーダーの要素の一つ「解放者」とは、それぞれのメンバーのやる気を高め、自由にアイデアを出し合う環境を用意することだ。消耗型リーダーはその反対にメンバーを抑圧し「独裁者」のように振る舞う。
解放者であるリーダーは、聞き上手だ。自分の話よりもまず、周囲の言葉に耳を傾ける。メンバー全員に話す機会を与え、お互いに知識を分け与える場をつくるためだ。 -
◎著者プロフィール
リズ・ワイズマン:オラクルで17年間オラクル大学バイスプレジデントおよび人材開発グローバルリーダーを務めた後、シリコンバレーにワイズマングループを創設。以来、世界各国の主にエグゼクティブを対象に、グローバルリーダーの養成に力を注ぎつづける。
グレッグ・マキューン:シリコンバレーのコンサルティング会社THIS lnc.のCEO。著書『エッセンシャル思考』(かんき出版)は日本でもベストセラーになる。