『ザ・プラットフォーム』 (尾原 和啓 著)
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■つながりをつくることで価値を生む「プラットフォーム」の可能性とは
現代社会では、SNSやショッピングモールなど、IT企業が提供するものを中心に「プラットフォーム」が溢れている。本書でのプラットフォームの定義は、多くの個人や企業が参加してつながりをつくることで価値を生む“舞台”。本書では、プラットフォームや、それを提供するIT企業の事例を挙げながら、それらが私たちのビジネスや生活、さらには世界の動きにどんな影響を与え、未来を拓いていくかを論じている。
教育分野で著者が注目するプラットフォームは非営利の教育ウェブサービス「カーンアカデミー」。授業動画を子どもたちに配信し、教育現場で役立ててもらうサービスだ。このプラットフォームを導入した教育現場では、生徒同士の「教え合い」が始まっている。著者は、そのことにより生徒同士の「好意の返報性」が育まれ、「恩送り(ペイフォワード)」の形で強い結びつきが続いていくことを指摘。そこにプラットフォームの可能性を感じている。 -
■「コミュニケーション消費」を重視する日本型プラットフォーム
著者は、日本型プラットフォームの大きな特徴である「コミュニケーション消費」に、「人を幸せにするインターネット」「自己実現へと向かうプラットフォーム」のあり方を考えるヒントがあると説く。とくに勢いを失う前の「ミクシィ」を優れた日本型プラットフォームとして高く評価する。
かつてのミクシィには「足あと」機能という、日記や書き込みが誰に読まれたかが分かる仕組みがあった。それが「読んだからにはコメントをつけないと」という気持ちを生み、交流の強化につながる。そうして階段を上るようにコミュニケーションを深められることが、ミクシィの最大の強みだったのだ。
日本では、それ以外にもiモードなどで広がった絵文字やデコメ、LINEのスタンプなどが盛んに使われている。そうしたコミュニケーション消費の中で、誰かに何かを提供し交換することで、それぞれの自己実現が図られる。それこそがプラットフォームの大きな役割といえるのだ。 -
◎著者プロフィール
IT企業役員。1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、Google、楽天(執行役員)などの事業企画、投資、新規事業などに従事。12職目となる現在は、インドネシアのバリ島に居を構え、日本と往復をしながら仕事をしている。「TED」カンファレンスの日本オーディションにも関わる。