『前に進む力』
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■常に成長し続けるために"コンフォートゾーン"にとどまらない
著者のダグラス・パーヴァイアンスは、1966年の結成以来、ニューヨークの最前線で活動し続け、グラミー賞の受賞・ノミネートの常連となっている「ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ(VJO)」のリーダー。本書は、自身の人生経験から得た教訓を、跡部氏によるインタビューを通して語ったものだ。
VJOがグラミー賞を獲得できたのは、自分たちがコンフォートゾーン(居心地の良い場所)にとどまらずに、いつでも成長を求めてチャレンジし続けてきた結果だ。グラミー賞をとろうとして何かをやってきたわけではなく、45年間、ひたすら「いい音楽を届けたい」、「ファンを喜ばせたい」と願いつつ、常に革新を続けてきた結果に他ならない。歴史あるバンドだから、昔の曲を昔のままに演奏するという楽な選択肢もある。しかしVJOは、ヴァンガード(Vanguard:改革者、先導者)という名に想いを込めたように、前に進むことを自らに課してきたのである。 -
■試練に対峙し「逃げない」人生を選択するために
「人生の最中に与えられる"チャレンジ"のうち、どれが『自分の力でなんとかできる』もので、どれが『自分の力ではどうしようもない』ものなのか、大切なのは、その"違いを見抜ける"ようになることだ」――著者は若い頃にこの言葉を知り、この考え方に常に助けられてきた。世の中には、変えられるものと変えられないものがある。たとえば「死」のように、絶対に抗うことができず、悲しみながら受け入れるしかない出来事もたくさんあるが、一方で自分の力でなんとかできるものや乗り越えられるものもたくさんある。大切なのは、両者の違いを見抜けるようになること。見抜くことで、これまで逃げていた大きな試練にもしっかりと対峙できるようになり、"逃げる"以外の選択肢を自分の人生に持つことができる。著者自身、かつて現実から逃げるために酒に溺れ、アルコール依存症になるという苦い経験をしているゆえに、前に進む力を説く著者の言葉は説得力がある。
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◎著者プロフィール
ニューヨークを活動拠点にするヴァンガード・ジャズ・オーケストラ(VJO)のリーダーでバス・トロンボーンの奏者。1977年より多数のジャズバンドで演奏・レコーディング・プロデュース活動を行い、VJOで自身が手がけた6作品全てでグラミー賞受賞・ノミネート、AIFM賞のいずれかを獲得している。音楽関連会社「パーヴァイアンス・プロダクション」を立ち上げるなど、音楽界の多様な領域で活躍中。