『牛に化粧品を売る』 ‐「生涯顧客」を作る、カリスマ販売員の接客習慣
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■物を売る者が、自然と身につけるべき習慣とは
本書は、岡山県新見市にある化粧品店で、著者がカネボウの『TWANY(トワニー)』という商品シリーズの年間売上高日本一を11年連続で達成した独自のノウハウを語りつくしたものである。
商売のノウハウとは、高度な技術や投資を必要とするものではなく、自然と身につけるべき習慣である。たとえば「お客様を否定しない」というのは話術の基本中の基本である。タイトルにもあるように、実際に牛の毛のツヤを出すための商品を探しに来た老人に対し、お客様を否定せず、人間用の毛髪スプレーを販売したことで、その老人はその後も顧客となり、末永くお付き合いを続けている。
売ることは、まず、聞くことから始まる。お客様のセンスを認めて褒め、相手の得意を喋らせることでお客様の興味を知ることができる。そして、お客様とのコミュニケーションを楽しみながらも、あるタイミングで商売に変えるために引く「チェンジレバー」を販売員は持たなければならない。 -
■お客様に生涯顧客になっていただくには
初めての人がお店に入ってきてくれるのはありがたい。一人のお客様を来店させるために、どれほど多くのチラシを配らなければいけないかを考えれば、そのありがたさがわかる。
お客様は、すごく満足していなくても、接客が良ければ3000円程度の買い物を一度はする。お客様が何に悩まれているのか、何に興味があるのかを見極めてアドバイスしてあげれば、もう一回この人に会いたいと思い、二度目もきっと来店する。難しいのは三度目の来店である。三度目もそのお店に行きたいと思うのは、はっきりとした目的を持ってお店に行くわけである。「このお店は自分のことをわかってくれている」――お客様にそう思っていいただくことが大事であると著者は語る。
そして、そこから、お店にとっての本当のお客様=『生涯顧客』を作るためには様々な仕掛けが必要となる。著者自身が回り道や苦労もしながら培ってきた独自のノウハウがわかりやすい例とともに紹介されている。 -
◎著者プロフィール
1952年岡山県生まれ。岡山県の化粧品・薬品販売店「安達太陽堂」専務。日本大学法学部卒業後、東京・赤坂の法律事務所に勤務。母の大病をきっかけに、故郷である新見市へ家族とともにUターンし、安達太陽堂に入社。その後、カネボウ化粧品の専門店向けブランド「TWANY(トワニー)」で、12年連続売り上げ日本一を達成し、殿堂入りを果たす。日本エステティシャン協会認定エステティシャン、毛髪診断士などの資格を持つ。