『アダプト思考』 (ティム・ハーフォード 著)

『アダプト思考』  ‐予測不能社会で成功に導くアプローチ

『アダプト思考』 (ティム・ハーフォード 著) 

著者:ティム・ハーフォード
出版社:武田ランダムハウスジャパン
発行:2012/05
定価:2,100円


【目次】
 1.状況に適応する ――アダプト
 2.対立 ――組織はいかにして学ぶか
 3.重要な新しいアイデアを生み出す ――変異
 4.貧しい人を救う方法を見つける ――選択
 5.気候変動 ――成功のルールを書き換える
 6.金融のメルトダウンを防ぐ ――デカップリング
 7.アダプトする組織
 8.さあ、アダプトを実践しよう

  • ■複雑で変化する時代に「失敗を恐れない試行錯誤」を

     複雑で変化の激しい現代社会において、企業においても、個人においても、将来を予測した綿密な計画を立てることは困難になっている。そうした状況下で選択すべき方法論として本書は、「アダプト(=適応)」のプロセスを提言している。
     経済学、心理学、進化生物学、人類学、物理学、政治科学を横断する研究のなかから生み出された「アダプト」の方法論とは、一言でいえば「失敗を恐れない試行錯誤」だ。生物学における「進化」の過程では、いくつかの変異体が生まれ、失敗したものが排除され、成功したものが複製されていく。こうした「変異と選択のプロセス」が繰り返され、高度な複雑性をもった生物が生まれた。この過程は組織や個人の発展や成長にも応用できる。すなわち、失敗を恐れず、失敗したらそれを認める勇気をもち、失敗から学び改善していくプロセスの繰り返しこそが、成功のカギとなるということだ。

  • ■わずか2ヵ月で作品を「酷評」から「大絶賛」へ

     「アダプト」には3つの基本ステップがある。すなわち(1)「失敗を恐れずに新しいことを試す」、(2)「失敗はよくあることなので、失敗しても大きな問題にならないようにする」、(3)「失敗したときには、それがわかるようにする」ことだ。
     「アダプト」の成功例の一つとして2002年に野心的なミュージカル「ムーヴィン・アウト」を成功させた振付家、トワイラ・サープの行動が挙げられる。プレミア上演で酷評された「ムーヴィン・アウト」は、わずか2ヵ月後の本上演では大絶賛されることになる。サープが酷評にめげずに作品を生まれ変わらせたからだ。巨匠であるサープが、現状を正当化しようとする心理的誘惑に打ち勝ち、謙虚に間違いを認めたこと、新しいアイデアを試すための場所や人を用意していたことが成功の要因だった。「アダプト」のためには、陥りがちな心理的な罠にはまらない、冷静で強靱な精神をもつことが大前提なのだ。

  • ◎著者プロフィール

    オックスフォード大学修士課程修了。シェル、世界銀行勤務、オックスフォード大学講師を経て、フィナンシャル・タイムズ編集委員を務める。コラムニスト、ジャーナリストとして、フィナンシャル・タイムズをはじめ、エスクァイア、フォーブス、ニューヨーク・マガジン、ワイアード、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど著名な雑誌・新聞に多数寄稿している。著書に『まっとうな経済学』『人は意外に合理的』等がある。