『佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?』  (茅原 裕二 著)

『佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?』  ‐身近な疑問から解き明かす「商標」入門

『佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?』  (茅原 裕二 著) 

著者:茅原 裕二
出版社:講談社
発行:2011/06
定価:1,575円


【目次】
 1.佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?
 2.ラーメン戦争
 3.あなたの「目印」似てますよ!
 4.スターバックスとエクセルシオール、コーヒー勝負
 5.獣対決とライン対決
 6.有名になるための死闘
 7.商標・目印の応用編

  • ■「目印」となる「商標」について豊富な実例をもとに解説

     私たちは日常生活においてさまざまな「商標」に囲まれて生活している。「商標」とは、ある商品や店舗などを他と区別する目印となるもの。企業等が名称やロゴ、デザインなどを商標として特許庁に届け、登録されると「商標権」という権利が発生、その独占使用が認められる。商標権は日本では「商標法」という法律によって保護されている。
     本書ではその「商標」をテーマに、豊富な事例をもとに日本における基準や使用法、戦略の立て方などについて論じている。ちなみに書名の「佐藤さん」は、平安時代に藤原氏が世を席巻した際に「藤原さん」だらけになり、家と家を区別するのが難しくなったため、住んでいた地名や職業などから一文字を取り「○藤」とした中で、いちばん多かった名前。本書では、商標=目印の重要性を語る取っかかりとして「佐藤さん」の由来について説明している。人の目をひくタイトルという意味で商標の役割を強調する狙いもある。

  • ■外観、称呼、観念の三つの物差しで「商標の類似」を判断

     商標法では類似する目印についても商標権の保護の対象としている。特許庁は「外観」「称呼」「観念」の三つの物差しにより、類似の度合いを判断する。「外観」とは見た目、「称呼」は読み方や聞こえ方、「観念」とはイメージのこと。たとえばライオン株式会社の「LION」という商標の場合、「L10N」は「外観」が似ている。また店頭で「ライモンのハミガキ」と言った場合は「称呼」が、似ているライオンの絵があったら「観念」が類似していると判断され、権利を持たない使用者を排除することができるのだ。
     本書では、事例としてラーメン屋の「大勝軒」、スターバックスとエクセルシオール・カフェのロゴの類似などの、商標をめぐる争いについて紹介している。さらに、企業の防衛策として「Sunny」「SOMY」「SANY」「THONY」「ZONY」などを含む約3000件にも及ぶ商標を登録あるいは出願中であるソニー株式会社の事例なども挙げている。

  • ◎著者プロフィール

    弁理士。わらしべ特許商標事務所所長。1969年岩手県生まれ。中学3年から自転車に夢中になり、自ら組み立てた自転車で、四国、九州、北海道、カナダを横断。「カナダ自転車横断」を自分の目印にして就職を勝ち取り、4年半のサラリーマン生活を経て無職の状態で結婚。7年間の主夫生活の後、弁理士試験に合格。東京都内の特許事務所で副所長として活躍した後に、2011年5月に独立、わらしべ特許商標事務所を設立する。