『デジタルネイティブの時代』 (木村 忠正 著)

『デジタルネイティブの時代』  ‐なぜメールをせずに「つぶやく」のか

『デジタルネイティブの時代』  (木村 忠正 著) 

著 者:木村 忠正
出版社:平凡社
発 行:2012/11
定 価:840円


【目次】
 序.アラブの春はソーシャルメディア革命だったのか
 1.デジタルネイティブへのアプローチ
 2.デジタルネイティブの形成と動態
 3.社会的コミュニケーション空間の構造と変容
 4.不確実なものを避ける日本社会
 終.「安心志向のジレンマ」を克服するネットワーク社会へ

  • ■増え続けるデジタルネイティブ世代

     1990年代半ばからの20年ほどで、情報ネットワークはダイナミックに変革を繰り返し、社会に組み込まれてきた。本書は、日本社会における情報ネットワークの展開を、デジタルネイティブを中心とした社会コミュニケーション空間の構造化と変容として読み解くことを主題としている。
     「デジタルネイティブ」とは、デジタル技術に学生時代から本格的に接した世代のことで、およそ1980年前後生まれ以降を指す。日本の総人口に占めるこの世代の割合は2000年段階では2割であったが、2010年現在ではおよそ3割にまで達している。つまり、2000年代から2010年代は、デジタルネイティブ世代が社会全体においても、ネット利用人口においても存在感を強めていく過程にあたる。著者はデジタルネイティブ世代を対象とした15年以上にわたる集中的調査研究をもとに、デジタルネイティブを通して情報ネットワーク社会としての日本社会のあり方を分析することを試みている。

  • ■なぜメールをせずに「つぶやく」のか?

     日本社会では、日常生活において「空気」という言葉が広く用いられ、人々の行動や態度を解釈する際に説明力を有している。「空気を読む圧力」が働く社会的コミュニケーション空間の基本枠組の中では、対人距離の近さ、遠さが、コミュニケーションメディアの選択と密接に結びついており、空気を読む圧力もまたその近さ、遠さにより異なる働きをするからである。
     デジタルネイティブたちはメールよりもツイッターで「つぶやく」ことを好む。ツイッターが実現するコネクション型コミュニケーションは、従来のオンラインコミュニケーション空間の特徴である「場」、会話の「キャッチボール」というメタファーを解体し、親密さと結びついた「空気を読む」圧力を回避し、「絡む」「テンションの共有」によるつながりを生み出している。日本社会においてデジタルネイティブたちがつぶやくことで切り開くコミュニケーション空間は、それぞれが自発的範囲でシンクロすることを志向しているのだ。

  • ◎著者プロフィール

    1964年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科、ニューヨーク州立大学大学院バッファロー校にて文化人類学を専攻。Ph.D.。東京都立科学技術大学、早稲田大学などを経て現職。専門は、科学技術人類学、情報ネットワーク論。著書に、『デジタルデバイドとは何か』(日本社会情報学会優秀文献賞、電気通信普及財団テレコム社会科学賞)、『ネットワーク・リアリティ』(ともに岩波書店)などがある。