『学び続ける力』 (池上 彰 著)

『学び続ける力』

『学び続ける力』 (池上 彰 著) 

著 者: 池上 彰
出版社: 講談社
発 行: 2013/01
定 価: 756円


【目次】
 1.学ぶことは楽しい
 2.大学で教えることになった
 3.身につけたい力
 4.読書の楽しさ
 5.学ぶことは生きること

  • ■学ぶ楽しさを知ることが現代の教養である

     テレビでのわかりやすいニュース解説でお馴染みの著者は、現在、東京工業大学の教授として理系の学生に一般教養を教えている。そのきっかけとなったのは、東日本大震災、福島第一原発事故のあと、テレビに出演する原子力や放射能に関する専門家たちが、大多数である文系の視聴者に理解してもらおうという発想もなく、難解な解説を繰り返していたことだった。それは、彼ら専門家たちに、一般教養=きちんとわかりやすく説明できる能力が不足していたからではないか。そんな思いから教授を引き受けた著者は、大学での学生たちとのやりとりや、自らの学びの体験を通して、教養とは何か、何をどう学んだらよいのか、さらには、学び続けることにはどんな意味があるのか、学ぶ楽しさとは何かを解き明かしながら、「学ぶ楽しさを知ることが現代の教養である」という持論を展開している。

  • ■「すぐに役立たないこと」を学んでおけば、「ずっと役に立つ」

     知識を身につけたいと思ったとき、ネットの検索に頼る傾向にあるが、ネットで得た「すぐに役立つこと」は、日進月歩の現代では、すぐ役に立たなくなってしまったり、また自分の関心のあることに限られてしまう。そこで大事なのは、あるキーワードで検索して引っ張ってきたものと、別のキーワードで引っ張ってきたものを重ねることによって新しい発想を生み出す能力である。そのためには、引っ張ってくるべき内容を大量に蓄積しておくことが必要で、それにはネットよりも紙の新聞や読書が有効である。新聞なら、自分の関心以外の記事も自然に目に入ってくるので、興味や知識の幅を広げることができるからだ。読書も、たとえ仕事に結びつかない本であっても、長い目で見ると、自分を高めたり、自分の世界を広げてくれる。「すぐに役立たないこと」を学んでおけば、「ずっと役に立つ」のである。教養を持つということは「よりよく生きる」ということであり、自分の存在が社会の中でどんな意味を持つのか客観視できる力を身につけることが学び続けることの意味なのである。

  • ◎著者プロフィール

    1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。2005年まで32年間、報道記者として、さまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題などを担当する。1994年から11年間は「週刊こどもニュース」のお父さん役を務めた。現在は、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。2012年より、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。著書に『相手に「伝わる」話し方』(講談社現代新書)など。