『小さな会社の経営革新、7つの成功法則』 (久保田 章市 著)
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■中小企業が生き残り、継続するためのヒント
企業が長く継続するためには、何が必要なのか。――企業継続のカギは、「経営革新」と「後継者」にあると筆者は語る。本書は、銀行員時代を含め1100人以上の経営者と面談をした経験を活かし、中小企業経営、経営者育成、地域経済などについて研究を重ねる筆者による「経営革新の教科書」である。
長寿企業の研究をする中で、長く継続している企業では、「伝統を継承しつつ、革新に取り組む」経営が行われているということがわかった。継承すべき「伝統」とは、例えば、顧客第一主義、本業重視、品質本位、従業員重視、企業理念の維持などである。「革新」とは、例えば顧客ニーズに合った商品・サービスの開発、新市場の開拓、新事業への進出などだ。伝統の継承と革新は企業という車の両輪であり、バランスを取って取り組むことが企業長寿の秘訣である。
企業が競争力を維持し、生き残っていくために必要な、様々な問題や課題に対応する際のヒントが、豊富な事例と共に提供されている。 -
■経営革新を行い得る後継者に必要なもの
経営革新を行い得る後継者に必要なものとして、「知識」「能力」「熱意」「人物」の四つがある。まず「知識」としては、自社や業界についての知識、経営に関する知識、そして社会や経済、海外市場の動向などについての知識が必要となる。「能力」はそれらの知識を実行に移すために必要であり、実務能力と人的能力の両方が求められる。「知識」「能力」がそろったら、次は、最後までやり遂げるための「熱意」が必要になる。熱意とは、目的を成し遂げようとする意気込みや熱心な気持ちのことである。
最後に必要なのが「人物」。これは人間的魅力、人柄などと言い換えることもできる。経営革新は当然ながら経営者一人でできることではなく、社員の支持と理解、社外の協力も必要となる。周りの人々が応援し、協力の手を差し伸べてくれるような人物になること、これが経営革新を行い得る後継者に必要な最後の、そして大きなひとつであろうと著者は結んでいる。 -
◎著者プロフィール
1951年、島根県生まれ。東京大学卒、法政大学大学院修士課程修了。横浜国立大学大学院博士課程単位取得満期退学。三和銀行・UFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)に30年間勤務、支店長・部室長7つを歴任。銀行員時代を含め1100人以上の経営者と面談。三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員を経て、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。専門は中小企業経営、経営者育成、地域経済など。主な著書は『百年企業、生き残るヒント』(角川SSC新書)、『21世紀中小企業の発展過程』(共著、同友館)など。