『ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略』(小西 圭介 著)
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■新しい時代の「ブランディング」とは
今なぜブランディングが問われなければならないのか。それは、「ブランド」の意味が、大きく変化しているからだ。ブランドとは、たんなるイメージではなく、企業が顧客にとっての価値を創造し、その提供を約束する存在としての主語である。顧客はブランドを手がかりに、相手が何を自分にもたらしてくれるのかを認識し、自らのニーズと価値観に合った選択をする。
ところが、今では、ブランドの価値を創造する主体として、ネットワークでつながり情報発信力をもった個人や生活者の役割が極めて大きくなりつつある。価値創造のあり方が変容することによって、ブランディングの意味することは必然的に大きく変化してきた。
今や、企業におけるブランド戦略の役割はかつてないほど重要になっている。企業にとって、顧客との共有価値を定義し、価値共創プロセスを駆動させるエンジンとなるのが「ブランド」である。本書では、生活者主導の時代の「ブランディング」を再定義している。 -
■「顧客と共創する」がキーワード
オバマ大統領やレディ・ガガのように、知名度を活かしてソーシャルメディアで多くのファンを獲得している著名人が数多くいる。また、特定の分野での情報発信力やネットワーク力をもって、数万~数百万人のフォロワーやフレンドをもつ個人も出現し、こうした層のメッセージ発信が、大企業にも匹敵する影響力をもつようになっている。
個人にとって「私たちが主役」の場であるソーシャルメディア上では、企業のアピールを一方的にメッセージすることでは生活者の支持を得ることは難しい。コミュニケーションのあり方は、モノログ(独り言)から、ダイアログ(対話)を促進するアプローチへのシフトが進んでいる。ダイアログを成立させるための第一歩は主語の転換、すなわち企業・ブランド主語から、顧客・生活者主語のコミュニケーションへの転換である。今日のマーケティングは、「顧客と共に創造する」ことが重要なキーワードになっている。 -
◎著者プロフィール
東京大学教養学部卒。1993年株式会社電通入社。同社ブランドクリエーションセンターのチーフコンサルタントとして、15年以上の事業・ブランド・マーケティング戦略コンサルティングの経験をもつ。2002年より米国で、デービッド・A・アーカー氏が副会長を務めるコンサルティング会社のプロフェット社に勤務し、グローバル企業のブランド戦略プロジェクトを経験。その後、電通にて数多くのクライアントに対して戦略支援を行う。訳書に『顧客生涯価値のデータベース・マーケティング』(ダイヤモンド社)などがある。