『価格の心理学』(リー・コールドウェル 著)

『価格の心理学』

『価格の心理学』(リー・コールドウェル 著) 

著 者: リー・コールドウェル
出版社: 日本実業出版社
発 行: 2013/02
定 価: 1,680円


【目次】
 1.ポジショニングと価格設定
 2.原価に基づく試算
 3.顧客心理の読み方
 4.マーケットのセグメンテーション
 5.バイアスとの戦いと公平さの追求
 6.記憶と期待
 7.アンカリング効果
 8.マーケットでの競争戦略
 9.おとり戦略
 10.代金の後払い
 11.ティーパーティー効果
 12.バンドリングの技法
 13.無料(フリー)の効用
 14.アップセリング
 15.提携販売とバリュープライシング
 16.他人のお金
 17.価格設定の環境整備
 18.「あげる」心理学
 19.価格設定と倫理

  • ■顧客心理をビジネスに活かす

     2002年頃から、経済学の手法と心理学の実証実験を組み合わせた「行動経済学」が広く知られるようになった。行動経済学では、顧客がどのように商品やサービスを購入するのか、どれだけの金額を支払ってもよいと思うのかをテーマに、数々の研究が発表されている。その内容に基づいて、価格コンサルタントが新たに編み出した価格設定の手法は20パターンを超えている。
     心理学が価格設定の成否を左右するのは明らかだ。多くの企業において、顧客心理を理解した価格設定が業績改善につながっている。いまや的確な価格設定なくして企業の存続や成長は望めず、価格戦略の役割はきわめて大きい。
     本書は、価格に対する顧客心理をビジネスに活かす方法を、手順ごとにわかりやすく伝える解説書である。どんな商品やサービスを販売する業種であっても、顧客が個人であっても法人であっても、あるいは行政機関であっても、役に立つ内容になっている。

  • ■なぜ無料サービスが効果的なのか?

     何かの購入を決めるとき、その判断基準はひとつではない。オンラインショップで書籍を購入すれば配送料も支払う。レストランでは、料理とともに飲み物も注文する。その時の顧客には2通りの考え方がある。ひとつは、個別の商品をセットにして、合計で支払金額の価値があるかどうかを判断する。もうひとつは、それぞれのアイテムを個別に検証して価値を見極めようとする。そのため、配送料が高すぎると思えば、総額は妥当であっても、購入をやめてしまう恐れがある。つまり、消費者に2回判断してもらうと、購入をやめる確率も2倍になるのだ。
     逆に、例えば配送料を無料で提供する、正確に言えば、それらを含めて基本価格にしてしまえば、消費者の判断する機会が減るので購入につながりやすい。顧客は「無料」と聞けば、「デメリットを考えずにメリットを享受できる」と思うので、商品の魅力が高まるとともに、顧客の購入判断も複雑にならなくてすむのだ。

  • ◎著者プロフィール

    価格リサーチの専門家。認知・行動経済学者。数学者。18歳で数学の学位を首席で取る。1994年、価格リサーチのコンサルタント会社Inonを設立。行動経済学と心理学をベースに最適な価格を解析する。価格コンサルティングに従事するかたわら、ビジネス解説者としてBBC Newsを含む多数のメディアに頻繁に出演する。