『価格の心理学』(リー・コールドウェル 著)
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■顧客心理をビジネスに活かす
2002年頃から、経済学の手法と心理学の実証実験を組み合わせた「行動経済学」が広く知られるようになった。行動経済学では、顧客がどのように商品やサービスを購入するのか、どれだけの金額を支払ってもよいと思うのかをテーマに、数々の研究が発表されている。その内容に基づいて、価格コンサルタントが新たに編み出した価格設定の手法は20パターンを超えている。
心理学が価格設定の成否を左右するのは明らかだ。多くの企業において、顧客心理を理解した価格設定が業績改善につながっている。いまや的確な価格設定なくして企業の存続や成長は望めず、価格戦略の役割はきわめて大きい。
本書は、価格に対する顧客心理をビジネスに活かす方法を、手順ごとにわかりやすく伝える解説書である。どんな商品やサービスを販売する業種であっても、顧客が個人であっても法人であっても、あるいは行政機関であっても、役に立つ内容になっている。 -
■なぜ無料サービスが効果的なのか?
何かの購入を決めるとき、その判断基準はひとつではない。オンラインショップで書籍を購入すれば配送料も支払う。レストランでは、料理とともに飲み物も注文する。その時の顧客には2通りの考え方がある。ひとつは、個別の商品をセットにして、合計で支払金額の価値があるかどうかを判断する。もうひとつは、それぞれのアイテムを個別に検証して価値を見極めようとする。そのため、配送料が高すぎると思えば、総額は妥当であっても、購入をやめてしまう恐れがある。つまり、消費者に2回判断してもらうと、購入をやめる確率も2倍になるのだ。
逆に、例えば配送料を無料で提供する、正確に言えば、それらを含めて基本価格にしてしまえば、消費者の判断する機会が減るので購入につながりやすい。顧客は「無料」と聞けば、「デメリットを考えずにメリットを享受できる」と思うので、商品の魅力が高まるとともに、顧客の購入判断も複雑にならなくてすむのだ。 -
◎著者プロフィール
価格リサーチの専門家。認知・行動経済学者。数学者。18歳で数学の学位を首席で取る。1994年、価格リサーチのコンサルタント会社Inonを設立。行動経済学と心理学をベースに最適な価格を解析する。価格コンサルティングに従事するかたわら、ビジネス解説者としてBBC Newsを含む多数のメディアに頻繁に出演する。