『考え抜く社員を増やせ!』(柴田 昌治 著)

『考え抜く社員を増やせ!』  ‐大転換期の「対応力」を育てる法

『考え抜く社員を増やせ!』(柴田 昌治 著) 

著 者: 柴田 昌治
出版社: 日本経済新聞出版社
発 行: 2012/10
定 価: 714円


【目次】
 1.「さばく力」が「考える力」を空洞化させる
 2.「仕事上の常識」という制約条件
 3.「脳」の自立に必要な経営環境
 4.「考える」ことの質を問い直す
 5.日本的な知力を生み出す
 6.チームイノベーションへの展開

  • ■急速に進む「考える力」の弱体化

     「社長は"お客様本位"を熱心に唱えているのに、営業本部長は苦々しく思いながら表向きは社長の言うことに付き合っている」「業績低迷を打破するために、掛け声ばかりは威勢がよいが、実態がまったく伴っていない」など、こうした状況はバブル崩壊後、効率第一主義で急速に進み、社員の「考える力」の弱体化によって引き起こされているという。次世代を担う経営人材には、しっかりとした「考える力」が不可欠だが、有望な人材といえども、物事の意味や目的を問い直す、というような経験をしてきている人は非常に少ないという実情がある。
     本書では、プロセスデザイナーとして企業風土・体質問題の変革をサポートする著者が、その豊富な経験をもとに「考える力」の重要性、真の「考え抜く力」とは何かを明らかにし、苦しい状況に追い込まれている企業が、これから回復の道をたどっていくために必要な「チームイノベーション」を産み出す方策を提言している。

  • ■「こなす力、さばく力」より、意味や目的を常に「考える力」が大切

     バブル崩壊後、日本企業の体質は大きく変化し、効率とスピードが最優先されるようになった。「目指すものは数値目標のみで、ただひたすら頑張った」結果、こなす力、さばく力は蓄えられたが、肝心の「深く考える力」が決定的に枯渇してしまった。状況を把握するのに不可欠なもの、それはまず正確な情報をキャッチするアンテナだが、その感度は、置かれている環境の中で、なぜこういう事態に陥ったのか、何が問題なのか、などを考え抜くことによって磨かれていく。いま、ここできちんとした危機感を持ち、問題認識をすることができれば、それが問題を解決していく対応力につながり、この対応力こそが回復の力になるのである。著者は、「意味・目的・価値などを事実に基づいて徹底的に考え抜く姿勢を持ち、"問題はあってはならない"といった精神論に縛られずに事実を客観的にみること。そのような習慣を組織の中に育てていくことが必要である」と呼びかけている。

  • ◎著者プロフィール

    株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表。1979年東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。ビジネス教育の会社を設立後、企業の風土・体質問題に目を向け、企業変革の実践の中で「プロセスデザイン」というやり方を結実させてきた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社を目指し、社員を主役にする「スポンサーシップの経営」を提唱。著書に『なぜ会社は変われないのか』(日経経済新聞出版社)などがある。