『リ・インベンション』

『リ・インベンション』

『リ・インベンション』 

著 者: 三品 和広/三品ゼミ
出版社: 東洋経済新報社
発 行: 2013/03
定 価: 2,100円


【目次】
 1.織機の快挙と悲劇
 2.西洋芸術史の教訓
 3.脱イノベーション
 4.起業家の挑戦
 5.企業家の挑戦
 6.大企業の挑戦
 7.製品企画へのヒント
 8.推進体制へのヒント
 9.企業改造へのヒント

  • ■時代はイノベーションからリ・インベンションへ

     イノベーションに成功すれば、消費者を満足させられるうえに企業も利益が得られる。そう信じて日本の製造業各社は邁進を続け、消費者の生活は豊かになったが、肝心の企業は必ずしも利益を上げるに至っていない。イノベーションはライフサイクル上の成長期までは効力を発揮するものの、成熟期に入ると信用や価格を重視する購買行動が支配的となり、効力が落ちてしまうのである。そこで、成熟期に入った日本企業が新しい挑戦に立ち向かうためには、「誰に、何を、どのように提供するものなのか」を規定する基本的な考え方を見つめ直して、コンセプト自体の改訂に立ち向かう「リ・インベンション」が得策となる。
     本書は、神戸大学大学院経営学研究科教授である著者が、ゼミ生とともに、リ・インベンションの具体的な実例をあげながら、その概念を明確にし、多くの教訓に基いた日本企業の再改造案を提出している。

  • ■リ・インベンションで臨機応変な経営スタイルに変えていく

     日本企業でリ・インベンションに成功した事例は、ソニーのウォークマンである。従来のカセットテープレコーダーからマイクとスピーカー、さらに録音機能を取り払うという引き算の製品は、心理的な抵抗に打ち克つことにも成功した。そして若者をターゲットに「いつでもどこでも自分の好きな音楽を持ち歩いて楽しむ」というコンセプトの実現にこだわり抜いた、その潔い姿勢が評価されたのである。これからの日本企業に必要なのは臨機応変な経営スタイルだろう。具体的には企業をディフェンスとオフェンスの2つの部隊に分割し、明確な機能分化を導入する。そして、オフェンス部隊にはR&Dやデザインや製品企画のようなアクティビティを委ねる一方、ディフェンス部隊は正社員で構成し、事業を日常的に回す管理や営業や技術サービスの仕事を委ねる。そうしてディフェンス部隊がプラットフォームになり、出入りの激しいオフェンス部隊を支えていくことが、海外勢に対する競争優位につながっていくのである。

  • ◎著者プロフィール

    神戸大学大学院経営学研究科教授。1959年愛知県生まれ。82年一橋大学商学部卒業。84年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。89年ハーバード大学文理大学院企業経済学博士課程修了。ハーバード大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助教授等を経て、現在に至る。著書に『戦略不全の論理』(東洋経済新報社、第45回エコノミスト賞受賞)など多数。