『MBB:「思い」のマネジメント』(徳岡 晃一郎/舞田 竜宣 著)

『MBB:「思い」のマネジメント』

『MBB:「思い」のマネジメント』(徳岡 晃一郎/舞田 竜宣 著) 

著 者:徳岡 晃一郎/舞田 竜宣
出版社:東洋経済新報社
発 行:2013/08
定 価:1,890円


【目次】
 序.スターバックスのMBB経営:価値観を守り、発展させる
 1.MBB:「思い」のマネジメントとは何か
 2.個人としてMBBを実践する四つのフェーズ
 3.組織としてMBBを実践する四つのフェーズ
 4.MBBを促進する人材マネジメント
 5.ソーシャル・リソース・マネジメント(SRM)
 終.ケーススタディ:MBBを実践するスターバックスコーヒージャパン

  • ■成果主義に替わる新しいマネジメント手法「MBB」

     日本で成果主義が導入されてから20年以上が過ぎて、マネジメントのあり方から、人事の思想や制度、一人ひとりの働き方、職場のあり方まで、あらゆる面が変化してきた。目標管理制度(MBO=Management By Objective)で個人個人に成果を約束させ、想定どおりの数字が上がれば、それが積み上がって目標売上を達成するという「足し算型」の予定調和的な仕組みはマネジメントしやすい。しかし、その一方で社員は疲弊し、イノベーションも不発になりがちである。今日、日本企業はマネジメント方法の転換を考えるべき時期に差し掛かっている。成果主義やMBO一辺倒のマネジメント手法に替わる、より持続的・包括的で人間性を取り戻せる仕組み、それがMBB(「思い」のマネジメント=Management By Belief)である。本書は、人事組織コンサルティングに従事するとともに大学教授として教壇に立つ二人の著者が、持続的に革新を起こす土壌を作り、人間性を取り戻すための新たなマネジメント手法として、MBBを提示する。

  • ■スターバックスの事例でみる「思いのピラミッド」

     MBBは具体的に5層の「思いのピラミッド」で表出化することができる。スターバックスの事例でMBBがいかに実践されたかをみると、同社の拡大主義を憂慮してCEOに復帰したシュルツ氏は、自分が復帰するのは「スターバックスを以前のような輝かしい企業にするためだ」と宣言する。これが「(1)思い」及び「(2)背景」の層にあたる。「(3)ストーリー」は、スターバックスはファストフード店ではないことを本気で示していくこと。「(4)壁」は、コーヒーの香りを台無しにしてしまうサンドイッチの拡販が収益の原動力になっていたことだった。そして、その壁を「(5)突破するポリシー」として、シュルツ氏はサンドイッチの販売から撤退することを決意、一杯のコーヒーを大切にするという原点に返ることを選ぶ。スターバックスはこうして再び「らしさ」を取り戻し、以前にも増して企業価値を高めていったのである。
     企業や組織はしっかりとビジョンを見据えて、そこへ社員が自律的に立ち向かえるようにしていかなければならない。MBBは「強い企業文化」を創造する作業といえるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    徳岡晃一郎:フライシュマン・ヒラード・ジャパン パートナー・SVP。多摩大学大学院教授。知識リーダー綜合研究所所長。日産自動車人事部、欧州日産を経て、1999年より現職。

    舞田竜宣:HRビジネスパートナー株式会社代表取締役社長。多摩大学大学院客員教授。グロービス経営大学院パートナー・ファカルティ。ピースマインド・イープ株式会社エグゼクティブ・コンサルタント。世界最大級の人事組織コンサルティング会社ヒューイット・アソシエイツの日本代表を経て現職。