『卵が飛ぶまで考える』 (下村 裕 著)

『卵が飛ぶまで考える』‐物理学者が教える発想と思考の極意

『卵が飛ぶまで考える』 (下村 裕 著) 

著 者:下村 裕
出版社:日本経済新聞出版社
発 行:2013/08
定 価:1,785円


【目次】
 序.科学的に考える
 1.批判的に考える
 2.問題を発見する
 3.問題を解決する
 4.生きるために考える

  • ■ビジネスや生活上の問題発見・解決に役立つ「科学的思考」を指南

     私たちは、ビジネス、あるいは普段の生活のなかで、何か不都合が生じた、あるいは物事を改善しなくてはならないときなど、問題発見とその解決が求められる場面にしばしば遭遇する。そんなときに役立つのが「科学的思考」だ。本書では物理学者である著者が「科学的思考」の手順や、それを習慣にする方法などについて解説。文系の学びしか経験してこなかった人にも理解できるよう具体的なエピソードが散りばめられている。
     科学のプロセスは、まず問題を発見し設定することから始まる。そして、その解決をはかるために仮説を立て、仮説が正しいかどうかを実証的に検証。実証は実験や観測によって行うが、数学の場合には実証のかわりに論証(論理を積み上げること)をする。その結果、もし仮説が正しいという結果が出なければ、元に戻り、別の仮説を立てて検証する。この繰り返しで答えが見つかれば、それが解決策あるいは理論になる。

  • ■先入観にとらわれず自由に考えてから過去の文献や他者の意見にあたる

     問題を発見するには、まず「異常」を見つけることから始めるとよい。著者が「回転卵のジャンプ」の現象を発見したのも、「卵が立つ」ことを検証するために行っていたシミュレーションの結果に異常を見出したことがきっかけだった。異常を見つけるには、普段からいろいろなことに興味を持ち、さまざまな角度からものが見えるようになっていることが必要になる。
     著者は「教科書は一冊でいい」と主張する。教科書を何冊も読むと、標準的な知見や定説が刷り込まれすぎ、既成概念や先入観が強くなってしまうからだ。そうなると正確な観察や自由な発想が妨げられ、異常を見つけづらくなってしまう。まずは先入観にとらわれず自分で自由に考える。それから過去の文献にあたったり、他の人と議論したり、実験をしたりといったインプットをする。そしてそれをもとにまた考える。そうした螺旋状のプロセスを経ることで真実に近づいていくことができるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    慶應義塾大学法学部教授。1989年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。同大学理学部助手等を経て、2000年より現職。2006~12年まで慶應義塾志木高等学校校長を兼務。専門は流体力学で、ケンブリッジ大学に訪問教授として在籍中に「回転する卵が立ち上がる現象」を解明した共同研究成果を科学誌『ネイチャー』に発表。さらに「卵は回転しながら一瞬ジャンプする」ことを予測、実証することにも成功した。