『無印良品は、仕組みが9割』 (松井 忠三 著)
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■奇跡のV字回復はマニュアルを中心とした「仕組みづくり」によってなされた
シンプルで無駄を省いた商品デザインやコンセプトで人々の心をつかみ、海外でも「MUJI」のブランドで親しまれている「無印良品」。このブランドを提供する(株)良品計画は、2001年に38億円の大赤字を計上するが、その後の改革により奇跡的ともいえるV字回復を果たす。そのときの改革のキーとなったのが「仕組みづくり」だ。本書では、改革を先導した同社会長自らが、「MUJIGRAM」「業務基準書」といったマニュアルを中心とした「仕組みづくり」の意義や具体的方法論について語っている。
無印良品のマニュアルは、社員やスタッフの行動をしばるために作られているのではない。同社のマニュアルには現場で培われてきた「知恵」をすくい上げ、それを共有する機能がある。また、業務の「標準」を定めることにより、そこを出発点とした創意工夫がしやすくなる。同社のマニュアルは、それを使う人の意識と行動を変えるきっかけとなるものなのだ。 -
■「なぜこの作業が必要か」を共有することで仕事の本質を理解させる
MUJIGRAMには、各カテゴリーの冒頭で「なぜこの作業が必要か」が記されている。重要なのは「どのように行動するか」ではなく、その行動によって「何を実現するか」。「自分はなぜこの作業をするのか」を常に意識することで、仕事の本質が見えてくるというのだ。
「どのような会社にしたいか」「どんな仕事をしてほしいか」を理念として掲げる会社は多いが、その理念を社員に十分に浸透させるのは簡単なことではない。しかし、良品計画では「行動を変えれば、人の意識は変わる」という考えのもと、まず「実行」することで理念を体に染みつかせるようにしている。たとえば「社員全員の心を一つに」とスローガンを掲げるよりも、実際に同じ作業を全員でやることのほうが社員の心を揃えられる。
また、仕事は日々、変化し、また進化する。同社のマニュアルは、最低でも月に一度は見直しをはかり、ビジネス環境や現場の実情に合わせ更新を行っているという。 -
◎著者プロフィール
株式会社良品計画会長。1949年静岡県生まれ。1973年、東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。1992年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年社長に就任。赤字状態の組織を“風土”から改革し、業績のV字回復・右肩上がりの成長に向け尽力。2007年には過去最高売上高(当時)となる1620億円を達成した。2008年より現職。