『非常識な本質』

『非常識な本質』

『非常識な本質』 

著 者:水野 和敏
出版社:フォレスト出版
発 行:2013/08
定 価:1,575円


【目次】
 1.非常識な本質
 2.はみ出し者が生きる道
 3.「お客様は神様」の本当の意味
 4.世界一を目指した型破りな開発
 5.答えはいつも会社の外にある
 6.ブランドの正体

  • ■常識の壁を壊し、思考の盲点に潜むビジネスの「本質」をつかむ

     ポルシェを超えた世界初のマルチパフォーマンス・スーパーカー「日産GT-R」を創った著者が、常識の壁を壊し、その先の思考の盲点に潜むビジネスの「本質」のつかまえ方を提言するのが本書だ。日産のレース監督時代、負け癖のついたチームを任された著者は、予算を4分の1以下に、通常は250人いるチームを50人に、さらに管理職がいないという「非常識な本質」をついたやり方を実践。目的へ一直線に向かう合理的なチームづくりに成功する。その結果、「やり直し」や「連携不足」といった成果のない仕事を減らし、クルマの信頼性や精度のアップを実現させて、国内耐久選手権で3年連続チャンピオンに輝くなど、日産のレース活動の黄金時代を築いた。
     日頃「こういうときには、こうすべき」という常識に沿って仕事を続けていると、人は仕事の本質や、やっている意味を見失い、惰性でこなすようになる。しかし、物事の本質を見極めて仕事に取り組むことができるようになると、「ヒト・モノ・カネ・時間」は半分で済むし、倍の結果を生むことができるという。

  • ■個人の感性や能力が発揮しやすいチームにしてGT-Rを開発

     日産GT-Rの開発がスタートしたとき、まずは理想のスタッフ集めが急務だったが、著者は「レースが生きがい」というエンジニアは雇わなかった。仕事や商品というのは、本来は人の幸せのためにあるもので、自分の好きなものを他人に押しつけて成功するわけがない、との考えからだ。代わりに、経営不振で他社を早期退職した、しかも乗用車の開発は初めてという人を集めた。それまでの実績や今あるポジションを失いたくないエリートに対して、他社をリストラされた人は失うものがないため、自分を捨てて新しいチャレンジができる。「失うものがない」人材に目的志向を与えて束ねる、これが人材活用の「非常識な本質」なのである。戦後の日本はアメリカの影響を受けて「使い捨てて合理的に生きる」文化思考になり、組織の歯車の中に人間の思考も組み込まれてしまった。しかしそこを正面突破して日本というブランドを再生するためにも、あえて組織で動かず、個人の感性や能力が発揮しやすいチームを作り、GT-Rを生み出したのである。

  • ◎著者プロフィール

    元日産GT-R開発責任者・レース監督。1952年生まれ。72年日産自動車に入社。89年ニスモに出向しレーシングチームの監督兼チーフデザイナーに就任。93年に日産自動車へ復職し、乗用車系・スポーツ系車種を中心に開発責任者として活動。とくに、世界に誇る日本のスーパーカー日産GT-Rにおいては、企画・開発・生産・営業等プロジェクトにかかわるすべての統括責任業務を遂行するなど辣腕をふるった。2013年3月の日産自動車退社後はセミナー講師等で活動中。