『85歳まで現役で働ける海外エンジニア生活』

『85歳まで現役で働ける海外エンジニア生活』

『85歳まで現役で働ける海外エンジニア生活』 

著 者:平田 稔
出版社:樹林舎
発 行:2014/01
定 価:1,050円


【目次】
 1.海外技術者への道
 2.世界が現場
 3.海外で上手に仕事&生活するコツ

  • ■安心して働ける、海外派遣の専門機関に技術専門家として登録

     定年や年金支給開始の年齢が引き上げられるなか、定年退職前後の人たちについての報道を見聞きすることも多い。一定のスキルを持った人は定年後も働く場を見つけやすいともいうが、本書ではさらに、58歳で退職後、長年培ってきたゴム技術者としてのスキルを生かし、海外で仕事を続けた著者の経験を踏まえて、技術者として自分の技術を役立て、海外で仕事をする機会があることが語られている。
     定年後も固有の技術を身につけた技術者であり続けたいという気持ちを持っていた著者は、現役時代の海外勤務経験から、海外にはエンジニアを指導育成する技術者が少なく、自分の技術が活かせる可能性があることを認識していた。その後、国が所管する海外派遣の専門機関の存在を知り、身分が保証され、安心して働けることから、技術専門家として登録。イラン、パキスタン、インドネシアで働き、68歳で任期が切れたあとは、海外の企業と直接契約するなどして、85歳まで海外で働いた

  • ■海外で仕事をするには、誠実な対応で知人、人脈を広げることが大切

     「人間はひとりでは生きていけない」とは古今東西を通しての金言だが、海外で仕事をする場合も同じである。自分の仕事に直接関係があるかないかに関わらず、機会あるたびに知人を作り、「誠実さ」をもって良い関係を保つことが大切だ。互いの信頼関係がしっかり構築されれば、国籍や人種を越えて、付き合いは長続きするのである。
     信頼関係が深まった例として著者は、イランの会社に在籍中に社長から「材料コストをもう少し下げてほしい」と要望された際、「これ以上下げると品質に大きく影響するから出来ません」と即座に答え、品質の落ちた製品を市場に出して問題が起きれば、会社の存続にも影響しかねないと説明したエピソードをあげる。後日、社長は「あの時、ミスターヒラタが『駄目です』とはっきり言ってくれたことが会社を救った」と話したという。
     社会的地位や立場を度外視して現地の人々と誠実に付き合ったことで、著者は自分にふさわしい海外の仕事を見つけ、定年後も続けてこられたのである。

  • ◎著者プロフィール

    1924年大阪生まれ。1944年桐生高等工業学校応用化学科(群馬大学理工学部)卒業。終戦まで川西航空機(株)材料研究課に勤務。戦後から1954年まで大阪のゴム製造会社に勤務した後、名古屋のゴム製造会社に勤務。一般社団法人ゴム協会東海支部常任幹事、副支部長、支部長を歴任。1982年で退職後、主にイランとインドネシアの現地ゴム企業の技術指導に当たった。