『奇跡の職場』‐新幹線清掃チームの“働く誇り”

『奇跡の職場』‐新幹線清掃チームの“働く誇り”

『奇跡の職場』‐新幹線清掃チームの“働く誇り” 

著 者:矢部 輝夫
出版社:あさ出版
発 行:2013/12
定 価:1,400円(税別)


【目次】
 1.なぜ「3K」の仕事が奇跡の職場になったのか?
 2.成功の種は現場に隠れていた!
 3.現場を会社が強くバックアップする!
 4.すべてはリーダーで決まる
 5.会社は二流でも、実行だけは一流を
 6.誇り、生きがいが働く人を輝かせる

  • ■3K職場が『奇跡の職場』と呼ばれるまでのプロセスを描く

     (株)JR東日本テクノハートTESSEI(通称:テッセイ)は、新幹線の車内清掃を担当する会社だが、そこで働く清掃スタッフの仕事ぶりが国内外で高く評価されている。質の高いサービスで有名な東京ディズニーランドの運営会社から見学に来たり、米CNNを筆頭にNHK、テレビ朝日などのテレビや日経ビジネスなど数多くのメディアで紹介されたりしている。その理由は、彼らが自分たちの仕事を単に「新幹線をキレイにすること」とは考えず、新幹線を利用するお客様の「旅の思い出づくり」のための「おもてなし」であると位置づけていることにある。スタッフは常にお客様のためにどんなサービスができるかを考えながら仕事をし、「おもてなし」のためのアイデアを次々と打ち出すのだ。
     本書は、3K職場そのもので、スタッフの多くも以前は「たかが掃除」と考えていたというテッセイが『奇跡の職場』と呼ばれるまでに変化したプロセスと、その根底に流れるポリシーを明らかにしている。

  • ■わずか7分で清掃。『新幹線劇場』でプロの仕事を見せる

     運行の遅れが許されない新幹線では、「掃除の速さ」は「おもてなし」の重要な要素である。到着した新幹線が折り返して発車するまでの時間は12分しかない。そこから乗降にかかる時間5分を引くと、掃除に使える時間はわずか7分。この7分間で、座席の下や物入れのゴミをかき集め、座席の向きを進行方向に戻し、1車両100席すべてのテーブルを拭き、窓のブラインドを上げ、窓枠を拭き、座席カバーを交換し、忘れ物をチェックする。しかも1車両を1人で清掃するのだ。
     また、その様子はすべてホームから窓越しに乗客たちに見られている。時には「新幹線の掃除の人たちがめちゃ速い動きで感動して泣きそう」「手際のよさはほんと見ていて惚れ惚れする」といった声がネットに寄せられることも。スタッフたちはいつしか自分たちの仕事を『新幹線劇場』と呼ぶようになった。見られていることがプロとしての自尊心をくすぐり、それがやりがいにもつながっているのだ。

  • ◎著者プロフィール

    株式会社JR東日本テクノハートTESSEI おもてなし創造部長。1966年の日本国有鉄道入社後、電車や乗客の安全対策の専門家として40年以上勤務し、2005年、鉄道整備株式会社(2012年に(株)JR東日本テクノハートTESSEIに社名変更)取締役経営企画部長に就任。従業員の定着率も低く、事故やクレームも多かった新幹線清掃の会社に「トータルサービス」の考えを定着させ、最強の「おもてなし集団」に変革させる。同社専務取締役を経て、現職。