『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』 (ブラッド・ストーン 著/井口耕二 訳)

『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』‐アマゾンを創った無敵の奇才経営者

『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』 (ブラッド・ストーン 著/井口耕二 訳) 

著 者:ブラッド・ストーン
訳 者:井口 耕二
解 説:滑川 海彦
出版社:日経BP社
発 行:2014/01
定 価:1,800円(税別)


【目次】
 1.信念を貫く
 2.書店サイトだけでは終わらない
 3.伝道師か、金の亡者か

  • ■無限の品ぞろえでオンラインでしか実現できない店舗をつくる

     アマゾンは書籍のネット通販サイトとしてスタートしたが、取扱品目を拡大し、いまでは日常生活の買い物をすべてすませられるほどになっている。アマゾンはなぜ、貪欲なまでに事業を拡張し続けるのだろうか。本書は、アマゾンを一代で築いた創業者、ジェフ・ベゾスの伝記であり、さまざまな業界に変革をもたらしていった経緯を明らかにしている。
     ベゾスがアマゾン創業にあたって立てた構想は「エブリシング・ストア」、つまり、インターネット企業がメーカーと消費者をつなぎ、世界に向けてあらゆる商品を販売するというものだった。そしてその先駆けとして白羽の矢が立てられたのが「書籍」だった。書籍は300万点以上も存在しており、どんな大型書店でもすべての在庫を持つことは不可能である。だが、「オンラインであれば、豊富な品ぞろえのスーパーストアが作れる」と考えたベゾスは、まずは「書籍」という1種類の製品について無限の品ぞろえを追求したのだ。

  • ■“人々の望みを満足できるもの”を追求して誕生したキンドル

     2004年、ベゾスは、新たなデジタル時代に書店としてアマゾンが栄えていくためには、自社で電子書籍事業を展開しなければならないという結論に達し、会議の席で長時間読んでいられる専用電子書籍リーダーの開発を宣言。だが、ハードウェアの開発は複雑で費用もかさむため、社内でも反対の声が次々にあがる。しかし、洗練されたハードウェアから使いやすいデジタル書店まで用意して顧客の体験をすべて管理する必要があると、ベゾスは皆の反対を一蹴する。
     こうして開発された初代キンドルは、アナログの本に比べ、さまざまな面で優れていた。わずか300グラム弱で200冊分のデータを持ち歩ける。Eインク採用で目に優しい。専用の無料3Gネットワークで簡単に、すばやく本がダウンロードできる。「電子書籍でキンドルだけが成功できたのは、世界一セクシーなガジェットを作ろうとするのではなく、人々の望みを満足できるものを作ろうと考え、その目標をとことん追求したからだと思います」(ベゾス)。

  • ◎著者プロフィール

    ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のシニアライター。ニューズウィーク誌、ニューヨーク・タイムズ紙などで15年にわたり、アマゾンやシリコンバレー企業について報道してきた。カリフォルニア州サンフランシスコ在住。著者のウェブページは、http://www.brad-stone.com/