『炭水化物が人類を滅ぼす』 ‐糖質制限からみた生命の科学 (夏井 睦 著)

『炭水化物が人類を滅ぼす』 ‐糖質制限からみた生命の科学

『炭水化物が人類を滅ぼす』 ‐糖質制限からみた生命の科学 (夏井 睦 著) 

著 者:夏井 睦
出版社:光文社(光文社新書)
発 行:2013/10
定 価:880円(税別)


【目次】
1.やってみてわかった糖質制限の威力
2.糖質制限の基礎知識
3.糖質制限にかかわるさまざまな問題
4.糖質セイゲニスト、かく語りき
5.糖質制限すると見えてくるもの
6.浮かび上がる「食物のカロリー数」をめぐる諸問題
7.ブドウ糖から見えてくる生命体の進化と諸相
8.糖質から見た農耕の起源

  • ■著者自身が体験した「糖質制限」の効果と、糖質をめぐる文明論を語る

     「糖質制限」というダイエット法がにわかに注目を集めている。その火付け役の一人とされる著者による本書では、著者自身が確かめた糖質制限の効果を語るとともに、人類の「食」の歴史における糖質の功罪をめぐる壮大な文明論が展開されている。
     糖質制限とは、文字通り糖質(炭水化物と砂糖類)の摂取を控えること。著者は半年の間これを実践することで、11キロの減量に成功した。また、それだけでなく、高血圧やイビキ、睡眠時無呼吸症候群などの諸症状も治まり、かなりの健康体を取り戻した。
     糖質(炭水化物)は三大栄養素の一つとして、一般には人体に必須なものとされている。しかし糖質は血糖値を上げる働きがあり、肥満や糖尿病などにつながるものでもある。糖質は必須栄養素どころか、害のあるものとして警戒すべきものなのだ。一方、脂質やタンパク質は血糖値とは無関係のため、ダイエットのために制限する必要はない。

  • ■「嗜好品」である糖質が私たちの食を支え、人類を奴隷にしている!?

     人類の食を支えているのは糖質であるといっても過言ではない。なぜなら、コメ、小麦、トウモロコシ、イモ類、砂糖など、私たちが主食やおかずとして口にしている食品の原料のほとんどが糖質だからだ。さらに言えば肉や乳製品を提供する家畜のエサとなる穀物も糖質である。
     かつて日本人の食事は朝夕の1日2食が一般的だった。だが、江戸時代に明暦の大火が起きると、幕府は復興のために全国の職人たちを江戸に集め、その職人たちが1日を通して働けるよう、昼に米飯を提供するようになった。職人たちは美味しい米が食べられることを喜びとし、長時間の労働もいとわなかったという。そこから1日3食の習慣が広まったと言われている。
     19世紀のヨーロッパでも、産業革命時に労働者を働かせるため、甘い砂糖が振る舞われるようになった。こうして日欧どちらでも、さらに世界中で人類は、「嗜好品」である糖質の奴隷になっていったのである。

  • ◎著者プロフィール

    医師。練馬光が丘病院「傷の治療センター」長。1957年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。2001年、消毒とガーゼによる治療撲滅をかかげて、インターネットサイト「新しい創傷治療」を開設。湿潤療法の創始者として傷治療の現場を変えるべく、発信を続けている。著書に『傷はぜったい消毒するな』(光文社新書)、『キズ・ヤケドは消毒してはいけない』(主婦の友社)、『さらば消毒とガーゼ』(春秋社)などがある。