『第五の権力』 (エリック・シュミット/ジャレッド・コーエン 著)

『第五の権力』 ‐Googleには見えている未来 (エリック・シュミット/ジャレッド・コーエン 著)

『第五の権力』  (エリック・シュミット/ジャレッド・コーエン 著) 

著 者:エリック・シュミット/ジャレッド・コーエン
訳 者:櫻井 祐子
出版社:ダイヤモンド社
発 行:2014/02
定 価:1,800円(税別)


【目次】
1.未来の私たち
2.アイデンティティ、報道、プライバシーの未来
3.国家の未来
4.革命の未来
5.テロリズムの未来
6.紛争と戦争の未来
7.復興の未来

  • ■世界80億人が「コネクティビティ」を手に入れ、大きなパワーが出現

     すさまじいスピードでインターネットの進化と普及が進んでいることを考えると、2025年には世界人口約80億人のほぼすべてがオンラインでつながることが予想される。本書は、そうした状況下で世界がどのように変わっていくのか、近未来予想図を描いている。
     世界中のあらゆる層の人々が「コネクティビティ(ネットワークへの接続性)」を手に入れ、互いにコミュニケーションがとれるようになれば、多くの人が革命さえ起こせるほどのパワーを手に入れる。これは、立法・司法・行政の三権と、20世紀型の報道機関という「第四の権力」に続く、「第五の権力」が出現することを意味する。
     コネクティビティの広がりにより、ほとんどの人が現実世界と仮想世界の二つの世界に同時に暮らすことになる。現実世界ではこれまで通り、地理的な制約などに縛られるが、仮想世界では時間と空間を超えたつながりによって、より創造的・効率的な活動ができるようになる。

  • ■インターネットの世界に国境ができ、多国間の同盟が結ばれる可能性も

     近未来の政府は、現実・仮想世界それぞれに向けた政策を実行するようになる。また、各国政府は、法的規制やフィルタリングによってインターネットの世界に介入しようとする。その結果、インターネットの世界が「アメリカのインターネット」「ロシアのインターネット」というように国ごとのネットワークの寄せ集めのようになる可能性もある。本来、グローバルである仮想空間に国境ができるかもしれないのだ。いわば「インターネットのバルカン化」である。
     それとともに、インターネット上で、政治体制やイデオロギーによる国家や企業の同盟が結ばれることも十分考えられる。独裁主義国によるサイバー連合、それに対抗する民主主義国によるアライアンスなどが形成され、仮想世界が現実世界に近づいていくのだ。
     いずれ、仮想と現実は互いに負の側面を抱えつつ平和的に共存していくことだろう。この両者のバランスによって、世界の未来は方向づけられていくのだ。

  • ◎著者プロフィール

    エリック・シュミット:Google会長。1955年生まれ。2001年から2011年までGoogleの最高経営責任者(CEO)を務めた。Google入社以前は、ノベルの会長兼CEOやサン・マイクロシステムズの最高技術責任者(CTO)を務めていた。
    ジャレッド・コーエン:GoogleのシンクタンクGoogle Ideas創設者兼ディレクター。2006年から2010年まで米国国務長官の政策アドバイザーを務めていた。