『創造農村』 ‐過疎をクリエイティブに生きる戦略 (佐々木 雅幸/川井田 祥子/萩原 雅也 編著)

『創造農村』 ‐過疎をクリエイティブに生きる戦略 (佐々木 雅幸/川井田 祥子/萩原 雅也 編著)

『創造農村』 ‐過疎をクリエイティブに生きる戦略 (佐々木 雅幸/川井田 祥子/萩原 雅也 編著) 

編著者:佐々木 雅幸/川井田 祥子/萩原 雅也
出版社:学芸出版社
発 行:2014/03
定 価:3,000円(税別)


【目次】
1.「創造農村」の時代
2.動きはじめた「創造農村」

  • ■クリエイティブな人材の誘致により過疎を克服する神山町

     農村の美しい自然環境や景観は、経済成長と都市膨張のなかで犠牲にされ、大型工場の建設、原子力発電所の立地などによって痛めつけられてきた。しかし、経済が停滞し、暮らしや仕事に対する人々の価値観が転換しはじめるにつれ、失われつつある美しい農村景観を保全・回復して取り戻し、「創造農村」を目指そうとする動きが現れはじめている。本書では、創造農村とは何か、理論的系譜を述べるとともに、先進的事例を取り上げて、その最新動向を分析し、課題を掘り下げている。
     創造的な過疎対策として最近、徳島県神山町が注目を集めている。環境と芸術にベースを置いた「国際文化村」を目指した取り組みを行い、アーティストを招き、滞在しながら制作を行ってもらうアーティスト・イン・レジデンスを展開している神山町。コミュニティぐるみのもてなしと同町の自然環境がアーティストを惹きつけ、空き家を改造し、オフィスとして活用するクリエイターも出てきた。さらには、ICT企業が空き家や空き工場にサテライトオフィスを開設する流れも生まれている。

  • ■「創造農村」ネットワークの広がりが日本社会を復興する

     神山町の例は、「アートの力を活用して旧来の地域文化を転換すれば、創造性あふれる知識労働者を誘引することができる」というビルバオ市(スペイン)の地域文化戦略を過疎地に創造的に適用したものだ。しかも、神山町に残る本物の豊かな自然環境が「創造の場」の磁力を倍増させている。
     「創造農村」とは、「住民の自治と創意に基づいて、豊かな自然生態系を保全するなかで固有の文化を育み、新たな芸術・科学・技術を導入し、職人的ものづくりと農林業の結合による自律的循環的な地域経済を備え、グローバルな環境問題や、あるいはローカルな地域社会の課題に対して、創造的問題解決を行えるような『創造の場』に富んだ農村である」と定義できる。
     このような文化芸術の創造力で農村を再生するネットワークの広がりが、閉塞感の漂う日本社会を創造的に復興・再生する鍵となるのではないだろうか。

  • ◎編著者プロフィール

    佐々木 雅幸:大阪市立大学大学院創造都市研究科教授・都市研究プラザ所長。1949年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。金沢大学経済学部教授等を経て現職。著書に『創造都市への挑戦』『創造都市の経済学』などがある。
    川井田 祥子:大阪市立大学都市研究プラザ特任講師。博士(創造都市)。
    萩原 雅也:大阪樟蔭女子大学学芸学部教授。博士(創造都市)。