『ヤンキー経済』 (原田 曜平 著)
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■「マイルドヤンキー」と呼ぶべき若者たちの生態や消費傾向などを分析
1970年代から80年代の日本では「ヤンキー」と呼ばれる反社会的な若者たちの文化が広く知られていた。本書は、21世紀の今日でも、その「ヤンキー」に近い思考や行動様式が一定のボリュームで存在すると指摘。そうした層を「マイルドヤンキー」と名づけ、彼らの生態や嗜好、考え方、消費傾向等を独自の調査結果をもとに分析している。
マイルドヤンキーは二つのタイプに分かれる。一つは「残存ヤンキー」。これは以前の典型的なスタイルを維持している“絶滅危惧種”だが、強面や強気の姿勢は薄まっている。そしてもう一つは「地元族」で、見た目は普通の若者と変わらない。服装もオシャレで、性格もやさしい。しかし、彼らは地元における生活と人間関係を何よりも大切にし、地元から出ることを嫌う。ここで言う「地元」とは、都道府県や市町村よりももっと狭い、半径5キロメートルほどの、中学・高校の「学区」ほどのエリアを指す。 -
■地元の仲間たちと過ごす時間を大切にし、それが維持されることを願う
マイルドヤンキーたちは同世代の平均的な若者に比べ、消費意欲が高い。例えば、一般的に「クルマ離れ」が指摘されるにもかかわらず、自動車を購入したいと思っているマイルドヤンキーは多い。しかも、ミニバンの人気が高い。地元の仲間と一緒に乗って、遊びに行きたいという動機で購入する人が多いからだ。
一方でマイルドヤンキーたちは電車を好まない。公共の場である電車は、クルマと違い“地元の仲間以外”の人もたくさん乗っているからだ。知らない人に囲まれながら、地元から離れた都市部に出ることなど、マイルドヤンキーにとっては恐怖でしかない。
マイルドヤンキーたちは、知らないことを知ろうとする好奇心も少ない傾向にある。彼らは、地元で大事な仲間たちと一緒に過ごす時間を大切にし、それがずっと維持されることを願っている。企業はそんな彼らの「現状維持のための消費」を念頭においた商品やサービスを考えるべきだろう。 -
◎著者プロフィール
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、(株)博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。著書に『近頃の若者はなぜダメなのか』『さとり世代』などがある。