『神山プロジェクト』 (篠原 匡 著)

『神山プロジェクト』 ‐未来の働き方を実験する

『神山プロジェクト』  (篠原 匡 著) 

著 者:篠原 匡
出版社:日経BP社
発 行:2014/03
定 価:1,500円(税別)


【目次】
1.新スポットが続々誕生!
2.それぞれの再始動
3.創造を生む空気の正体

  • ■過疎化が進む山あいの町にITベンチャーのオフィスが続々と誕生

     徳島県の山あいにある、人口6100人ほどの神山町が今、注目を集めている。都市部のIT企業の移転が相次いでいるのだ。産業が廃れ、過疎化が進んでいた町がにわかに活性化している。本書では、そんな神山の現状や、数々のアイデアを実行に移すことにより地域再生のきっかけをつくったNPO「グリーンバレー」の活動の軌跡が紹介されている。
     2010年10月に、名刺管理サービスのSansanが、神山町内で空き家となっていた古民家を借りて「神山ラボ」というサテライトオフィスを開設したことが、移転ラッシュを呼ぶきっかけとなった。それにならい、次々と都市部のベンチャー企業が同様のオフィスを作ったのだ。また、若きアーティストやクリエイターも活動の場として神山に滞在するようになり、それに伴い、新しい店舗や施設も続々と誕生した。まさに町が生まれ変わってきているのだ。2011年の人口統計では、減少は食い止められていないが、転入者数が転出者数を上回った。

  • ■肩の力が抜けた創造集団による自由なアイデアが功を奏す

     ITベンチャーが神山町に目をつけた理由の一つは、同地域に全国屈指の通信インフラが整備されていることだった。かつて徳島県知事が政策として県内の光ファイバー網を整備した結果だ。だが、それだけが理由ではない。神山町を本拠とするNPO「グリーンバレー」によるさまざまな仕掛けが効を奏したのだ。
     グリーンバレーは15年ほど前から「神山アーティスト・イン・レジデンス」という、国内外のアーティストを招聘し神山に住みながら作品を制作してもらうプロジェクトを行っている。また、それに続けて始めた「ワーク・イン・レジデンス」は、手に職のある若い人を同町に定住させるプロジェクトだ。サテライトオフィスのアイデアも同NPOによるものだった。
     グリーンバレーのモットーは「やったらええんちゃう」。否定から入らず「面白い」と思うものはとにかくやってみる、という姿勢が特徴だ。ほどよく肩の力の抜けた集団が生み出す創造力が神山を救ったともいえるだろう。

  • ◎著者プロフィール

    日経ビジネスクロスメディア編集長。1975年生まれ。1999年慶應義塾大学商学部卒業、日経BP社入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者を経て、2012年10月から現職。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや!』(日本経済新聞出版社)などがある。