『老けない人の免疫力』 (安保 徹 著)
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■年を重ねるとは、衰えることではなく、身体のしくみが変わること
風邪をひきやすくなったとか、疲れやすくなったと感じると、「もう歳だから仕方がない」と思う人が多いが、これらは本質的に年齢とは別の原因によるものである。にもかかわらず、自然の摂理に逆らって、クスリを使って加齢までも無理矢理コントロールしようとするのが今の医療であり、これが身体と心をひと足早い“老化”へと導く一つの原因になっている。本書では、世界的な免疫学者である著者が、自然な生き方に身をゆだね、いくつになっても正常な免疫力を保ってはつらつとした毎日を過ごすためのヒントを伝授している。
年を重ねるとは、衰えることではなく、身体のしくみが変わることである。例えば、年を重ねるほどエネルギー消費の効率はよくなる。若者はたくさん食べる、つまり燃費が悪いが、年をとるとそれほど食べなくても活動できるようになる。「年をとって食が細くなった」と嘆く人がいるが、むしろ「小食でも持続力を保てる『エコ的な生き方』ができる身体になれた」と喜ぶべきだ。 -
■「数値」よりも、身体の声に耳を傾けることが大切
厚生労働省の「高血圧治療ガイドライン」によると、血圧の正常値は、上が130とされている。これを真に受けて毎日血圧を計り、降圧剤を飲んで病気を予防しようという人が多いが、これは明らかに間違った生き方だ。人体は38億年という気の遠くなるような年月の積み重ねによって少しずつ進化し、環境に適応してきた。つまり、特効薬の力を借りずとも、自分の力で生き抜く「対応力」を身につけてきたのであり、その正体こそが免疫力である。
血圧が上がっているとしたら、「上げる必要があるから上がっている」のである。同時に、それは身体が疲れているというメッセージであり、早く寝て、疲れをしっかりとる必要がある。このように身体の声に耳を傾け、自分自身の物差しで「活動」の強弱を調整することが、老けない人になるための大原則だ。血圧、年齢、コレステロール。もっといえば、仕事の売り上げノルマに年収――。数字にとらわれるからこそ、不安にとりつかれ、それが原因で病気にもなるのである。 -
◎著者プロフィール
新潟大学名誉教授。医学博士。1947年青森県生まれ。72年、東北大学医学部卒業。80年、米国アラバマ大学留学中に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製、「Leu-7」と命名。89年、「胸腺外分化T細胞」を発見し、96年に、白血球が自律神経のコントロール下にあることを世界ではじめて見出した。細胞レベルから免疫のメカニズムを解き明かし、最前線で活躍を続ける世界的免疫学者である。