『仮想通貨革命』 ‐ビットコインは始まりにすぎない(野口 悠紀雄 著)
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■社会を変革するかもしれない仮想通貨「ビットコイン」のシステム
ニュースなどで注目を集めた「ビットコイン」というインターネット上で使える仮想通貨は、実は社会のシステムを大きく変革する可能性を秘めている――。本書では、そのビットコインが拓くかもしれない未来に注目。その画期的な技術と仕組み、応用例などを、詳細に解説している。
私たちが通常使用する円やドルなどの通貨は中央銀行や政府が、電子マネーは特定の企業が発行・管理している。ところがビットコインには発行者も管理者もいない。ビットコインは多数のユーザーのコンピュータによるネットワークで維持されているのだ。
ビットコインの最大のメリットといえるのは、送金コストの安さである。通常の企業活動やサービスでの送金コストは、先進国で送金額の2~3%だが、それがゼロに近くなる。そのため利益率の低い少額取引によるビジネスモデルが成立しやすくなる。外貨に交換する必要もないので、貿易決済通貨としても利便性が高い。 -
■画期的な「ブロックチェーン」のシステムを応用した試み
ビットコインの取引は「ブロックチェーン」というネット上の記録によって行われる。コインを受け取った人はその取引記録がブロックチェーン上に記載されているか確認できる。記載されることで受け取った人が正当なコインの保有者として認められ、それを他の人に送金することが可能になる。そしてそのセキュリティは、「プルーフ・オブ・ワーク」という斬新な発想によるシステムによって守られている。
ビットコインのブロックチェーンの仕組みを他の領域に拡張する試みも多数行われている。その一つ「DAC(分権化した自動企業)」は、組織の運営を分散型のシステムで自動化しようとするものだ。企業などの組織のトップの頭脳を代替し、中央集権的な管理者がいなくても機能させる。
これからは、ブロックチェーンの仕組みを上手に利用して、新しい事業を展開した者が優位に立つ。優れたアイディアが次々に実現され、社会の進歩は加速するだろう。 -
◎著者プロフィール
早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。1940年東京生まれ。1963年東京大学工学部卒業、1964年大蔵省入省、1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年より現職。『「超」整理法』(中公新書)、『変わった世界 変わらない日本』(講談社現代新書)等著書多数。