『現場力を引き出すリーダーの条件』(デイナ・アーディ 著)
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■情報化時代に有効な「オーケストラ型」リーダーシップを論じる
IT技術が広まり、誰もが情報を集め発信できる現代では、組織のあり方や有効なマネジメントの方法も変わってくる。その中で現場力を引き出すために必要とされるリーダーシップを本書では「オーケストラ型」と定義、その内容を詳しく論じている。
米国の企業文化は「アルファ型」と「ベータ型」の2種類に分類できる。アルファ型の組織は中央集権型で階層構造をとるのに対し、ベータ型の組織は権力分散型で水平的な構造をとる。
かつての産業社会では「経験」が重視された。しかし情報化が進む現代の仕事は、経験より創造性が重要とされる。なぜなら個々の経験はデジタル化して保存、共有することが可能だからだ。創造性が発揮されるのはアルファ型ではなくベータ型の組織とリーダーだ。それはオーケストラと指揮者の関係に似ている。指揮者の目標は各々の楽団員の能力を最大限に引き出し、それらを一つに合わせて全体の力に変えることだ。 -
■命令ではなくキュレーションによって人を動かす「ベータ型」リーダー
ベータ型のリーダーは、命令ではなく、キュレーションによって人を動かす。すなわち、専門家たちにそれぞれの専門分野を深く掘り下げさせ、そこから生まれるアイデアを選別し、どう組み合わせるかを考えることがベータ型リーダーの仕事となる。そのために組織のメンバーには、興味がある、あるいは専門知識のある分野を追求させる。それは各々の自己実現にもつながる。
自己実現のチャンスが与えられたメンバーは、リーダーや組織そのものに対して、強い感情の結びつきをもつようになる。そのような結びつきを感じられたメンバーは、できる限り最高のパフォーマンスを残そうとする。企業であれば、各々の社員の最高のパフォーマンスは利益につながる。
もしメンバーに自発的な努力が見られれば、感情の結びつきができつつある兆候と見ることができる。反対に自分たちの費やした時間について不平をこぼすことが多ければ、それは感情のつながりを失っている証拠だ。 -
◎著者プロフィール
経営幹部のコーチングや人材斡旋の専門家。コーポレート・アンスロポロジー・アドバイザーズの創立者、マネージングディレクターとして、人を通じて企業に変革を起こすためのアドバイスを行っている。ニューヨーク在住。