『南国港町おばちゃん信金』 ‐「支援」って何? “おまけ組”共生コミュニティの創り方(原 康子 著)
-
■インドの貧困層への「援助しない技術」による支援をユーモラスに描く
途上国・新興国の貧困層への支援は、単に金銭や物資を与えるだけでは十分ではない。住民たちが自立して幸福な生活が送れるための側面的なサポートが重要となる。本書では、インド東海岸の港町で、庶民の女性たちが相互扶助による信用金庫を設立するまでのストーリーを、そのプロジェクトを担当したNPO職員の目線でユーモラスに描いている。その際に著者らが行ったのは、本来あるべき「援助しない技術」による支援だったという。
著者がインドのビシャカパトナム市を訪れ、初めてスラム(貧民街)の“おばちゃん”たちのもとを訪れたときには、「何もくれんのかね」と言われ、すぐに追い返された。都市スラムを訪れるときには、相手との関係づくりに細心の注意を払う必要がある。「おばちゃんたちとの間にどんな共通課題があるか」をしっかり認識し、「自分はここで何をしたいのか」を、読み書きのできない相手にもわかるようにしっかりと説明しなければいけない。 -
■自分たちで計画し行動することで「新しい共生コミュニティ」を築く
著者らによる「信金プロジェクト」がスタートする以前にも、同地には数名で構成されるマイクロクレジットグループによる相互扶助の少額融資のシステムがあった。ただしその運営は実質上、地元のNGOが行っており、おばちゃんたちはそれに依存しきっていた。しかし、著者らのプロジェクトでは、方法だけを教え、手取り足取り指導することなく、計画から届出まですべて自分たちで行わせた。著者たちNPOメンバーは、上から教えるのではなく、“一緒に”作り上げる姿勢を貫いた。
プロジェクト開始から2年半後の2006年12月、「おばちゃん信金」は産声を上げた。それから規模を拡大し、今では3000人以上の会員を持つに至る。信金ができたおかげで、それまで高利貸しや親戚などに頭を下げてお金を借りていたおばちゃんたちが、堂々と自分たちのお金として融資を受けられる。これは庶民が自分たちの自尊心を守り、互いに高め合う新しい共生コミュニティなのだ。 -
◎著者プロフィール
国際協カコンサルタント、コミュニティ開発専門家。途上国の農村や都市のスラムのおばちゃんたちと、自信や自尊心を高め合い、共生のコミュニティを創る「お節介」が仕事、という看板は掲げているが、現在、開店休業中。亥年、岐阜県出身、ネパール在住。