『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』(マルコム・グラッドウェル 著)

『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』

『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』(マルコム・グラッドウェル 著) 

著 者:マルコム・グラッドウェル
訳 者:藤井 留美
出版社:講談社
発 行:2014/09
定 価:1,400円(税別)


【目次】
序.ダビデとゴリアテ
1.弱小チームが勝つには
2.貧しい家の子が勝つには
3.二流大学が勝つには
4.識字障害者が勝つには
5.親に先立たれた子が勝つには
6.マイノリティの人種・民族が勝つには
7.精鋭の治安部隊に勝つには
8.突然の悲劇に勝つには
9.自分の運命に勝つには

  • ■「強い者が勝つ」という常識をくつがえす「逆転勝利」について論じる

     「強い者が勝つ」のは世の常識である。しかし、現実には権力をもっていたり財力のある者が必ずしも勝利を収めるとは限らない。本書では、弱者が強者に勝つさまざまなケースを紹介し、表面上の弱さが不利にならない方法について論じている。
     旧約聖書の時代、パレスチナの地で、羊飼いの少年ダビデと屈強な兵士ゴリアテの決闘が行われた。ダビデは重たい鎧をつけて動きが鈍くなっていたゴリアテの唯一の弱点である額めがけ、投石器で石を発射。勝利を収めた。
     ヴィヴェック・ラナディヴェは、バスケットボールのジュニアチームの監督を務め、弱小チームを全国大会に連れて行った。「フルコートプレス」と呼ばれる戦略が効を奏した。相手チームによる得点直後のスローインをいきなりカットする。スローインが成功した場合には、そのボールを受けとった選手を狙いトラップする。相手の攻撃が手薄になるスローインを狙い、ディフェンスに徹したのである。

  • ■有利な条件も程度が過ぎてしまうと不利に転じることになる

     教育現場では、どの国でも1クラスの人数は少ない方がいいとされている。大人数では、授業に参加しない生徒にまで目が届かないからだ。ただし、少人数であればあるほどいいというわけではない。少なすぎると意見の幅が狭くなり、議論が進まなくなる。クラスの覇気もなくなる。
     また、裕福な家庭の子どもが優秀に育つとは限らない。もちろん貧しい家庭では、子どもに愛情を注ぎ、教育を受けさせる十分な余裕がないことが多い。しかし、裕福すぎる家庭では、お金の意味やまじめに働くことの大切さを学ばせるのは困難だ。
     クラスの人数も、豊かさも、右肩上がりの直線のグラフのようには、その有利さは増していかない。一定の水準を超えると、下がり始める。グラフでは「逆U字型」になるのだ。ゴリアテの体が大きすぎたがゆえに格好の標的になったように、大きい、強い、金持ちといった有利な条件も、ちょうどよい水準を過ぎてしまえばかえって不利になる。

  • ◎著者プロフィール

    コラムニスト。1963年イギリス生まれ。雑誌「ニューヨーカー」のスタッフライターとして活躍中。社会科学の知見と読み応えのあるストーリーを組み合わせた、独特の記事で知られる。世界でもっとも人気のあるコラムニストの一人。著書『急に売れ始めるにはワケがある』(ソフトバンク文庫)、『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』(光文社)、『天才! 成功する人々の法則』(講談社)はいずれも世界中でベストセラーに。