『50代から始める知的生活術』 (外山 滋比古 著)
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■50代で二度目の種付けをする二毛作人生のヒントを提供
年をとっても気力を充実させるヒントは、サラリーマンだけの一毛作人生ではなく、複数の仕事を経験したり、仕事と趣味を使い分けたりして二度の作つけをする二毛作人生を送ることにあるのではないか?
本書は、91歳にして最前線で活躍する著者が、年齢を重ねても気力にみなぎる人生を送るにはどうしたらよいのか、そのために若いときからどんな心構えをもって生きれば二毛作人生を送られるかを、自らの体験を踏まえながら述べている。
一般企業の場合、たいていは定年を前に決断を迫られるが、第二の人生を充実させたいなら、資産形成のトレーニングも、新たな仕事を見つける試行錯誤も早いほうがいい。「五十にして天命を知る」との孔子の言葉に従えば、50代のテーマは2回目の作つけの種を決めることにある。50代は天の命とも言うべき、後半生の自分の生き方を決するときであり、すでに人生の後半戦の戦略を決めていなければならないのだ。 -
■人生後半は知識の習得ではなく、考える力をつける
後半の人生を充実させるための「知的生活」とは、「知識」の積み重ねではなく、自分の頭で「考える」ことにある。習得した知識が生きるのはせいぜい30代までで、40?50代となれば知性を働かせなくてはならない。さらに、60代以降は、自分が受けてきた知識教育の足かせをはずして自らの頭を自由にすることで新たな独創力を獲得することができる。
また、第二の人生の道のりは長いので、自分なりのアイデアや発想は、無理にまとめず、ワインの熟成を待つように寝かせておくと、だんだん純度が高まっていく。かつて、アメリカのウォルト・ロストウという経済学者は、彼の名を世界的にした論文のはじめに「このテーマは学生のときに思いついた」と書いている。寝かせた思考が熟成するまで、実に20年も待っていたのである。第二の人生を歩み出そうとするとき、心のどこかに眠っている思考の種を探してみると思いがけない発見があるかもしれない。 -
◎著者プロフィール
英文学者、評論家、文学博士。お茶の水女子大学名誉教授。1923年愛知県生まれ。東京文理科大学英文科卒業後、51年に雑誌『英語青年』編集長に就任。56年に東京教育大学助教授、68年にお茶の水女子大学教授となる。専門の英文学のほか、言語論、修辞学、さらには教育論など広範な学術研究と評論活動を続けてきた。『外山滋比古著作集(全8巻)』(みすず書房)、『思考の整理学』(ちくま文庫)など著書多数。